第1章・一年前
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「お休み、明日も仕事なの。」
彼女は高校の英語教諭で、拓也と知り合ったのは実は女の教育実習の時である。十五歳だった拓也を二十二歳の女が誑かしたのだ。
誑かした、と言ったらかなり聞こえ悪いが、先にちょっかい掛けたのは拓也である。
先生ってアンジェリーナジョリーに似てるよね。十七歳のカルテに出てるブロンド。薬中のぶっ飛んだ奴。
其の時は、何とも思わなかった。女自体が先ずにアンジェリーナジョリーを知らず、職員室でちょこっと調べた。
私って、こんな顔…?
少しショックだった。
確かに日本人離れした顔ではあるが、此処迄は流石にないだろう。然も拓也が例に出した映画が大概悪かった。
あの映画で惚れる拓也も如何かと思うが、真意が判らない女は本気で貶されたと思った。
抑に此の女優、素行がかなり悪い。其れもショックだった。
もっとこう、キャメロンディアスとかメグライアン…詰まりラブコメが似合いそうな女優辺りが良かったが、残念乍ら此の系統の顔では無い。
ファニーやキュートというよりは、悪役顔、ディズニー的に云えばヴィランズ寄りなのだ。
舐めるでない、学芸会で何時も毎回籤引もさせて貰えず満場一致で、悪役をしていた訳では無い。…何の自慢にもならないが。
――ねえ、私ってこんな顔なの!?なんか邪悪だよ!?
――似てない?目と口、でっかい、美人。目力がスゲぇ美人。猫みたいな。
――…褒めてるの…?
――え?うん、一応。あ、御免、気に障った?俺、大好きだから。
あ、そうなんだ、と女は納得し、職員室に戻ると横に居る教諭に、私ってアンジーに似てますか?と聞いた、したら腹を抱えて笑われた。
研修期間は一ヶ月だったが、拓也と女は切れなかった。
何故か。
実習二週間目の夜に偶然拓也を見てしまった。
公園から若い男の笑い声がし、やだ怖い、と怯え乍ら女は公園に向いた。なんだか見た事ある様な背格好で、笑い声も拓也に似ていた。井上君かも、と思い安心したが、当然拓也は一人では無かった。此れで一人だったらかなり怖い、一人で笑っている事になるのだから。
拓也は公園のブランコに乗り、横には長身痩躯の男が居た。
暗闇で光る赤い炎。其れは互いの手にあった。足元には何か良く判らないが円錐状の物が転がっている。
気付いた女は動けなくなった。
未成年で飲酒喫煙をし、何が驚いたか、拓也が未だ十五歳だという事だ。一年前迄は中学生なのだ、其れがさも当たり前のように、中年親父みたく煙草蒸しビール瓶を傾け、ゲラゲラ笑っていた。
目が、合った気がした。
唯暗かったので、拓也と確信持てず、偶々こっちを向いたのがそう見えただけだろうと思っていたが翌日、あんたなんか昨日見た?と人気の無い所で聞かれた。
――え、あ、うん…
――誰かに云った?
――ううん…、私目悪
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