序章
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事が無いのか?」
「…一寸何云ってるか判らない。貴方こそ病気なんですか?」
本郷の言葉に課長は口から珈琲を零し、此奴はダメだ早くなんとかしないと、噎せ乍ら笑った。
「御自分にも興味が無いんでしょう。」
入り口から聞こえた声、振り向くと、科捜研の心理担当、菅原時一が何故か居た。
呼んだ覚えも無ければ事件も無い、何故現れたのか訝しんでいると、加納さんは?と澄んだ声を出した。
「加納なら帰ったぞ。」
「え!?」
大きな目を一層大きくし、其の面積、糸目吊り目の本郷に三分の一分けてあげれば良いのに、そしたら少し視野が広まるんじゃないか…色んな意味で、と思った。
「嘘、え?帰った?」
「加納に用事か?」
「用事っていうか、加納さんが用事を頼んだんです。嘘、何あの人、人に用事頼んどいて忘れて帰った訳?信じらんない…」
「薄情な能面だろう。」
「僕は良いんだよ、途中だったし。うわぁ、斎藤さん怒るよ…、加納さんが頼んだんじゃん…」
斎藤、とは菅原と同じに科捜研で働く文書担当の男で、斎藤八雲と云う。
其の時だ。
ばん、と扉が開き、十分前に出て行った加納がぜぇはぁ息を切らし、肩で何度も呼吸を繰り返していた。
「すが…菅原さん…、忘れてました…」
ノンフレイムの眼鏡の奥にある切れ長の目は息苦しさに何度も瞬きを繰り返す。白い頬は赤いのに、顔全体は所々青い。
「貴方が頼んだんですよ?」
「はい…、申し訳無い…」
「渡せたんで良かったですけど。」
菅原は持っていた箱を加納に渡し、渡された加納は一礼すると、ふらふらし乍ら帰っていった。
「あれなんだ?」
「アクセサリーですよ。」
「加納が?」
「あーいえ、奥様のらしいです。」
木島や課長、本郷だけでは無い、其の場にいた刑事全員が菅原の言葉に動揺し、何かの間違いだろう、と木島は菅原に詰め寄った。
加納が既婚者とは、寝耳に水だ。独身だと思い込んでいた。尤も、プライベートな話をする程誰も仲良くないが、仲良くなろうとも思わないが。
「彼奴、結婚してんのか…?」
「さっき渡したやつ、奥様のアクセサリーらしくて…大きさからしてチョーカーかな?、凄く高価な物なんですよ。ダイヤとアクアマリンで出来てて。もう僕吃驚して、多分あれ、五百はするんじゃないですか?…と、斎藤さん談です。」
此れは現実の話なのだろうか、と木島と本郷は思った。
妻のジュエリーに五百万円。
総額でない、たった一つで、だ。総額が気になる所だが、流石はSクラスベンツに乗る男、二千万溶かしてても笑う男、妻への金の使い方も桁が違う。
然し加納が既婚者だったとは些か驚いた。
女に対して関心なさそうだが、本郷みたく全く興味無い訳でもなさそうだと感じたのは、そうか既婚者、だからか。
妻
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