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歪んだ愛
第3章
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ゆりかから、夏樹が好きだと相談されたのは秋だった。
此の夏の頃からゆりかは、家から三十分程の場所にある法律事務所でアルバイトをしていた。アルバイトならもっと他にあるのに、と飲食店でアルバイトする私は思ったものだが、法学部に在学する彼女には納得行くものだった。其れに父も…ゆりかを支配する父も、下手なアルバイトよりマシだと納得した。
本来なら夏休み期間中…九月迄の約束だったらしいのだが、何故か、青々とした葉が紅葉し、蝉の声が秋虫に変わってもゆりかは日曜日行っていた。
十月の、そうだな、妙に冷たい風の夜だった。
私の部屋に彼女は居て、二人でベッドに座ってビールを飲んでいた。最もゆりかは、私が三本目のプルトップを開けた時、未だ一本目の三分の一も飲んで居なかったけれど。
邪魔して良い?と云って来たのはゆりかだ。
十一時位じゃなかろうか。小論文を書いて居た私は、ノックの音に向いた。缶ビールの箱を持ったゆりかが笑っていた。
最初、何の目的でゆりかが部屋に来たのか判らなかった。だって彼女は、黙った侭チビチビとビールを飲んでいたから。私は気にせずゆりかに背を向けた侭、ビールと煙草を交互に喉を動かし、パソコンに向いていた。
「ねえ、まどか。」
「うん?」
「今、好きな人、居る?」
私の手は止まった。
煙草を消し、眼鏡をずらした目でゆりかを見た。
「居るっちゃ居るし、居ないっちゃ居ない。」
「私、好きな人出来た…」
彼女の告白に私は眼鏡を外し、パソコンをスリープにした。小論文所の話では無い。天文学的に云えばビックバンを目の当たりにしたのだ。
椅子から立ち、ゆりかの横に寝た。此の時私は既に三本目に手を伸ばしていた。
「初恋じゃない?」
「うん…」
身体を巡る熱の放出の仕方を知らないゆりかは、文字通り焦がれていた。
好きなら好きって云えば?と云ってみたもの、食事内容さえ私に決めて貰わないと無理なゆりかに、其れは無理だと思った。
洋服だって、此れ如何思う?と聞き(買った後に、買う前に聞け)、私が肯定すると袋から出され、否定すると私に回す…そんな女であった。
ゆりかの性格は、父にあった。
幼少から病弱な彼女は、いいや、世に生まれる前から父に過保護と言う名の支配を受けていた。母のお腹の中で一回り小さいゆりか、生まれてからも呼吸器系に問題があり、生後の私は母の横に居たのだがゆりかは二日程検査で私の横には居なかった。
此の頃の記憶、当然無いが、あれば私はこう思って居るだろう。
何故私は一人なのだろう、と。
確かに二人だった筈、同じ部屋で同じ時間を共有し、私が吐いた息をゆりかが吸い、ゆりかが吐いた息を私は吸っていた。一卵性なのだから当然だ。
なのに何故、ゆりかは私より小さいのだろう。私が欲張り過ぎたのか、其れであったら申し訳ない。
故に父の
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