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歪んだ愛
第3章
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うなら、名前でしか、区別が無いんだ。御前が夏樹と一緒に居る時事故に遭って、最悪死んだら、俺が、世の中から消える事になるんだぞ…、其処迄ゆりかになれって云うのか…」
そんなの、冗談じゃない。
あんな父親の思い通りに生きる人生なんて、死んだ方がマシだ。最悪の其の時が来たら、私も“ゆりか”として自殺しよう。
然し中々ゆりかも暢気な女で、二十二年間事故に遭った事無いんだからそう遭わないんじゃない?と云った。
此奴は、一体私をなんだと思って居るのか。
奴隷とでも思って居るのか。冗談ではない。
「所長…」
「あん?どした。」
受話器の向こうの声は、安心感を私に教えた。ずっと此の中に居たいと思う程で、私の手は知れず身体を這った。
「ゆりかが、憎い…」
そうさ私は、始めから私で存在した事等無かった。母の愛情を得る為、父の愛情を得る為、私はゆりかの為に存在した。ゆりかを守れば、存在を認められた、だから私はゆりかに尽くした、依存した。そうしなければ存在出来なかったから、ゆりかが父の望む侭示唆の侭生きる様に、ゆりかは私の人生全てだった。
「そうか…」
所長の声はワインの様に濃密で、容易く私の頭を撹乱させた。
「大嫌い、ゆりかなんて…」
「落ち着け。」
「私は一体なんなの…」


其の時私は誓った、愛してるが故、ゆりかを殺そうと。
彼女の溜め込んだ心の悲鳴に、目を閉じた。
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