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歪んだ愛
第3章
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ゆりかに対する執着は尋常を期していた。其れ迄相当なスモーカーだったが、ゆりかの喘息を知り辞めた。
父の人生は最早ゆりかの為に存在し、ゆりかの人生は父の物だった。ゆりかの人生は彼女の物であって、彼女の物ではなかった、然し、彼女には当然な事だった。寧ろ彼女には、私が奇妙な存在に映った。
何故なら私は、私の人生を、私の物として生きて居るから。高校も大学も、学部とて私は私で決めた。ゆりかには其れが不思議だったのだろう。
ゆりかの物事に対する決定権は父、父が道を出さなければゆりかは進む所か立ち上がりさえしない。
二人揃ってヘンゼルとグレーテルの様に森に置き去りにされたとしよう、森を世間だと思えば良い。私は如何にかして道を見付け、家を見付けようと躍起するが、ゆりかは座った侭動かない、何故なら、父に“動くな”と云われているからだ。
何なのだ、此の女は。
二人揃って餓死でもしろと云うのか、朽ち果て虫の腹を満たせとでも云うのか。
冗談じゃない。
私の人生は私の物だ、父の物では無い、だから私は、父の助言が無い場合のゆりかの手を引いた。
今回は流石に父の助言は期待出来ない。
ゆりかには、全てに於いて、世間から見て一寸上、でなければならない。
家柄学歴、知性に品性…、ゆりか本人は当然、ゆりかに関わる全ての人間に対して此れは当て嵌まる。
新米弁護士、まあまあ合格ではなかろうか。
「偵察に行ってあげる。」
「本当?嬉しい。」
ゆりかの缶ビールは漸く空になった。
其の一週間後だった、ゆりかが風邪を引いたのは。
チャンスだと思った。私はゆりかに計画を話した。治る迄の間私が代わりに出向く、其れで私が認めれば告白しろ、と。ゆりかは頷き、気管支の凄まじい音を聞かせた。
夏樹は、典型的な日本人顔…所謂醤油顏を持つ男だった。二枚目と云えば二枚目なのだが、頼りない感じがした。雰囲気イケメン、とでも云おうか、いや、イケメンではある。が、もう一つ何かが足りない。何が足りないのかも判らない。
惜しい男であった。
恋人居るか、と聞いたら、え?其れって空想の生き物じゃないの?画面から出て来ない、とか、薄っぺらい、とか、息してない、とか、或いは河童とか土の子とかそんな類のUMA、見た事無い、何処に居るの?恋人って生き物、見付けたら僕に頂戴、大事にするから、探してるんだけど見付かんない、と彼は返した。
笑った。
此の性格ならゆりかを楽しませる事が出来るだろうと安心した。
「大丈夫、彼奴なら安心だ。」
「良かった。」
そう云ったゆりかだが、何故か此の侭私の代わりに働いてくれない?と云った。
理由は此の時判らなかったが、事務所に来て五日目、わたしは身の毛もよだつ洗練を受けた。
其の日事務所は私と所長二人だった。書類整理する所長にお茶を出したのだが、一口飲んだ彼は、静
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