第3章
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に、彼は男子校に進んだ。
彼が居なければ、まどかは本当に社会復帰が出来なかっただろう。
社会には男が居る、其の中で嫌悪や恐怖を持った侭生活するのは並大抵では無い。本当に救われた。
卒業式の日、ボタン全てを下級生に強奪された幼馴染みはこう云った。
俺が居なくても泣くんじゃねぇぞ、と。
施錠された屋上に繋がる踊り場。太陽の光も届かず、春の冷たい空気が溜まっていた。
生徒の声も風の音も聞こえなかった。
――有難う。
――何が。
判っているのに幼馴染みは卒業証書で遊んだ。
――俺、あんたが居たから救われた。
――ばーか。
冷たいリノリウムの床で隣合わす互いの手はふた周りも違った。
骨と筋が張る彼の手に小指で触れた。
――止めろよ。
空気に似た冷たく、硬い低い声だった。
――俺はそんなんで御前を守ってた訳じゃねぇよ。
――うん…
肩パッドの入った学ランの肩に頭を乗せた。
――ねえ。
――うん?
――大好きだよ。
――馬鹿じゃねぇの…
――アレが無くても、あんた、俺の事守ってくれた…?
――……嗚呼。
――云って良い?
――駄目…
――俺さ。
――云うなって…
――あんたを最後の男にしたい…
――駄目だって…
桜が萌えるのは、こんな感じなのだろうか。
互いを写し合う瞳が近付き、骨張った指先が唇に触れ、其の侭頬を引っ張る様に流れた。生暖かい彼の唇の温度に口が開き、湿った舌が自身の舌と合わさった。
――初めてキスした…
――俺だって初めてだよ…、なんせ番犬だったもので…
――三回回って。
――バウ!…うるせぇよ…
幼稚園時代から知ってる相手と、こうなるのは不思議ではあった。
相手は何時しか男となり、まどかは女と変態していた。
冷たいリノリウムの上に敷いた学ランの上に身体を横たえると、彼の変化した匂いが鼻腔を付いた。愛撫も侭ならない…そんな手順だったが、殴られ、口を塞がれ、訳の判らぬ侭公衆トイレで貫かれた時よりマシだった。
――用意周到。
――ちげぇよ…
避妊具の封を口で切る彼に云った。
キスもくれる、侭ならないが胸や秘部への愛撫もしてくれる。
時間にするととても短かった。然し二人には、適度な時間だった。
――まどか…
――うん…?
俺が居なくても泣くなよ。
又同じ言葉。其れでもまどかには嬉しかった。
大丈夫、もう、大丈夫。何があっても、もう泣かない。
私は此の体温をずっと覚えてるから…。
彼の汗ばむ首筋に鼻を寄せ、男への愛情をまどかは断ち切った。
元から友達だったが、此れで本当に友達の関係に戻った。
まどかの中学三年間は自由奔放だったが、ゆりかは違った。下から数えた方が早いまどかに対し、常に学年上位に入って
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