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歪んだ愛
第3章
―6―
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た臭い…。酸の強い、いがいがした臭いが鼻にこびり付いていた。其れと、強烈なアンモニア臭。

――まどか、おいまどか!

聞こえたのは幼馴染みの声で、まどかは声のする方を見上げた。

――此処、何処…?

“東条まどか”が発見された緑地帯の障害者用トイレでまどかは呟いた。
足首が痛い、全身が痛い、なのに血がこびりつく下半身は痛覚が完全に失せていた。
幼馴染みがまどかを見付けたのは偶然だった。まどかに貸す予定だった漫画本が鞄に入っていたのを見た彼はまどかに電話をした。繋がった時は、めんどくせぇ、等と会話していたが、音は突然途切れた。
いきなり不通になった事を彼は訝しみ、何度か掛けたが虚しく呼び出し音が響くだけ。メンドクセェのはこっちだよ、と家に出向いた。
聞こえた着信音。微かにする。
緑地帯入口に設置されるトイレから其の音はしていた。
違う。
何故か鞄だけ、トイレの外に“置いて”あった。

――まどかー?

外から女子トイレに向かって叫び、然し反応は無い。誰も居ない事を前後左右確認した彼はトイレに足を踏み込んだ。
瞬間、障害者用のスライドドアーが開く音がし、肩を強張らせた。
俺、体格良いけどノミの心臓なんだってば!
バクバクする心臓で女子トイレから出、障害者用トイレを覗いた。
左頬を紫に変色させたまどかが、片足裸足で、下着を膝迄ずり下げた侭便器に座っていた。
鍵閉めて用足せよ!とドアーを閉めたが、なら俺が聞いた最初の音はなんだったんだ、とゆっくり開いた。
地獄の門を、開いた気分だった。
幼馴染みのジャケットは、まどかの身体には余った。彼に手を引かれ帰宅し、騒然とする母親とゆりかに彼は玄関先にへばり付いた。
何してんだ、此奴。
そう、土下座する幼馴染みを見てまどかは思った。

――済みません、済みません、俺が居ながら…俺が…

俺があの時送っていれば……。

瞬間和臣の胃は熱く脈打ち、瞬く間に其の熱さは食道迄上昇した。喉が火を飲み込んだ程熱くなるのを感じ、仙道の言葉を遮った和臣は、取調室の隅にあるゴミ箱を鷲掴むと顔を突っ込んだ。
ゴミ箱を抱える和臣の背中を唖然と見詰める仙道、課長の大きな手が薄い和臣の背中を摩った。
胃液しか出ないのに、何度も吐いた。
無くなる筈が無い憎しみが胃から込み上げた。
「刑事さん、大丈夫か?」
まどかの抱える傷、似ていた。和臣が一生忘れる事の無い記憶と傷に似ていた。
何と無く感情移入したのは此れだったのか。
和臣は最後に唾を吐き捨て、珈琲で口を濯ぐと煙草を咥えた。机に投げられた煙草に仙道は和臣を窺い、充血する目が逸らされたので一本抜いた。
「其れで?其の後如何なった?」
和臣の問いに仙道は続ける。
まどかの被害を知った父親は勿論激高したが、警察には届け
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