第3章
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た。
気付いた仙道は灰皿に捨てた。
「東条は、池上だけじゃなく、其れに関係する人間の人生を粉砕した。冬馬は池上を恨み、妻は人生の大半を地獄の中で過ごした。愛人達はもっと悲惨だ。娘は一桁の頃から男達の玩具で、薬漬けにされて、恋も知らず、男の優しさも知らず十八で死んでる。残った今十八歳の弟は池上以上の屑だ。愛人だって、性病に掛かり過ぎて抗生物質が一生手放せない身体だよ。両親揃って働けねぇから、接触禁止令出してる。絶対冬馬に集るだろうなって。実際晴香さんの葬儀で来てるじゃねぇか。」
「御前の憎悪の対象は東条だろう、娘達は関係無い。」
「関係無いと思うか?まさに東条のクソ野郎の血を引いてんだよ。云うなれば、あの娘達が一番の被害者だよ。あの支配的な男に育てられて、まともに育つと思うか?ゆりかは人一倍臆病で、まどかはレズじゃねぇか。」
「ゆりかの性格ははっきりと医学的に証明されてるが、まどかのゲイは病気じゃ無い。」
「…悪かったよ、言い方変える。」
一体此の短時間で何本吸う気なのか、来た時に封が開いていた煙草は、此れで最後だった。
「まどかは確かに生まれた時からゲイだろうけど、物理的原因もある。」
「物理的…」
「東条に恨み持った奴に中学時代強姦されてる。元から女が好きなのに、男から強姦されてみろよ。まどかが世界一嫌いなのは男だよ。」
最後の一本に火が点いた。
強姦という言葉に、和臣の身体にも火が点いた。
己の快楽の為では無く、東条への復讐の為に被害に遭ったと云うのか。
「そして、世界一、東条を恨んでる。当然だろう、父親の所為で強姦に遭ったんだから。」
東条家の中心は何時もゆりか。喘息の発作を恐れる母親に、まどかよりも女らしく一回り小さいゆりかを盲愛した父親。同じにリビングのソファで談笑して居ても、まどかは何時もテレビを見ている気分だった。
唯、ゆりかの発作が始まると、母親の態度は急変した。
何でこんなに手が掛かるの、ゆりかは…。
用事がある時に限って発作を起こす…結果母親は何時も友人との約束や、稽古事を取り止めるしかなかった。
まどかは良いわね、手が掛からなくて。ゆりかもまどかみたいだったら良かったのに。
母親の其の言葉は、疎外感を覚える幼稚園児のまどかでも強烈に印象が残った。
――本当?
――赤ちゃんの時からまどかは良い子よ、ちっとも泣かないし、ママを困らせないもの。
ゆりかには兎に角金が掛かった。喘息の治療費に加え、小学校に入ると歯科矯正が加わった。矯正器具に不愉快示し、周りからからかわれると泣いては母親を困らせた。其の点まどかは健康で、滅多に風邪も引かず、理想的な歯並びとさえ云われた。
一卵性の筈なのに、ゆりかとまどかの性格は真逆だった。
走り回るまどかを、本当に嬉しそうに見る母親の目を忘れられな
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