第3章
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の数年前迄の“闇金”の取り立ては凄まじかった。其の記憶が無いとは、家に取り立てが来ていない証拠である。
其の筈で、池上にはもう一つ家庭があった。
池上の本妻…夏樹の母親の職業はホステスだ。一方で愛人はソープ勤務をして居た。
夏樹の母親もまあ若いが、愛人は其れより五歳ばかし年下だった。だから闇金側は愛人の方を担保にした。三十近い女より、二十歳を一寸過ぎた女の方が需要がある、其れに、夏樹の母親が五年働いたとしたら三十過ぎるが、愛人の方は未だ未だ二十代半ばに近い。
「そう思ったら、少し愛情あるって、思わねぇか?」
「如何かな。」
「未だある。冬馬は池上から折檻受けてねぇけど、愛人の方のガキ、ヒデェもんだぜ。二人居るんだけどな、男の方はもう唯のサンドバッグ、娘の方は売りもんだよ。小学生のガキに何してんだって思うけどな、池上も、買う奴も。でもまあ愛人より遥かに金になるから。」
「詳しいな。」
「俺、此れでも弁護士だからな。素性調査は得意なんだよ。御宅等警察や探偵と同じでね。」
「部下の素性洗うのか、嫌な上司だな。」
煙草に火を点けていた仙道は、課長の言葉に狸顔の丸い目をぱちくりさせ、違う違う、と煙を払う様に手を振った。
「冬馬な、最初来た時、池上って名前だった。で、冬馬の最初の依頼人が母親。冬馬一人じゃ未だ出来ねぇだろうと思って一応俺も手伝ったんだわ。したら出るわ出るわ、見事な屑が。久し振りに見たわ、あんな屑。母親に敬服したわ、良く冬馬が育ったなって、然もあんな立派に。母親思いで、本当、優しい子に育ってるよ。」
仙道は鏡に向き、鏡一枚隔てた向こう側に居る夏樹に微笑み掛けた。
「で、不安的中したわ。」
「不安?」
項垂れた仙道は微かに口角を釣り上げ、視線を流した。
「晴香さんが死ぬ前日の昼間、俺の所に連絡が来たんだ。」
此れは夏樹も初耳で、鏡にへばり付いた。
ほんま有難う御座います。未だ使えない息子かも知れませんが、先生、息子の事、お願いします。男に、したって下さい。
母親が死ぬ前日、確かに定時より早く帰宅させられた。あの時は理由が判らなかったが、夏樹も夏樹で抱える仕事を家でゆっくり纏め様と、仙道の言葉に甘え帰宅した。
「気が気じゃなかった。冬馬が自宅に着いた頃であろう時間に、お母ちゃんが死んでるとか電話着たら如何しよう、やっぱ俺も付いてきゃ良かったかな、とか思うだろう?でも結局其の日は連絡無くてホッとした。けど…、翌日だよ、冬馬から連絡あったのは。」
所長、何でか知らん、お母ちゃん、真っ赤で寝てんねんけど、浴槽で。お母ちゃん、風邪引くで。なあ、お母ちゃんて。ていうか、シャワー冷た…、生臭…
「其の時俺の中の東条に対する憎悪が、燃え盛った。」
仙道の指に挟まる煙草は、フィルターに近い。其の時炎に触れた気分だっ
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