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歪んだ愛
第3章
―5―
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長の顔面に六本目の煙を吹き掛けた仙道は大きく笑った。
「あんたは如何やったて夏樹を犯人にしたいらしい。」
咥え煙草の侭仙道は話し、捕食獣の目で和臣を見た。
「其処の刑事さんは、片割れを疑ってる様子だぜ?」
薄い煙の向こうに見える、復讐と血に飢えた目。
「勘違いすんじゃねぇよ、俺はな、復讐の為に、弟子を使う程落ちた師匠じゃねぇんだよ。夏樹は、御前等が思う以上に有能な弁護士なんだ、そんな奴の未来、俺が壊せると思うか。師匠ってのはな、何処の世界も、弟子が自分より上に行くのを望むんだよ。そして、認めるんだよ、御前は、もう一人前だって。」
仙道はゆっくり立ち上がり、和臣を通り過ぎると取調室の鏡に腕を乗せた。
「夏樹、居るんだろう?」
鏡の向こう、別室に居る夏樹が、仙道に姿は見えども、寄った顔に顔を寄せた。
「所長…」
「師匠失格だ、御前に一瞬でも疑念が向いた。有難うな、俺の三文芝居に付き合って呉れて。」
「駄目…」
止めて所長、云わないでくれ…。
言葉は口から出ず喉で詰まり、腰から抜けた。
「全ては、五年前から始まってる。全て俺が一人でした。まどかも夏樹も、何も、知りゃしない。」
だろう?冬馬。
聞こえない筈の夏樹の嗚咽が聞こえたのは何故だろう…、和臣はそう思い、全貌を見る為目を伏せた。
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