第3章
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事しか出来なかった。
唯、気分は良かった。
男世界では、チビだ何だ女顔の萌やし、と嫌味と侮蔑され続けるが、一六〇センチ越えれば“背が高い”と称される女の世界では、此の低身長もハイスペックに位置付けられる。
長身痩躯のアジアンビューティー…女の世界で和臣はそう映る。
矢張り女に産まれるべきであったかな、とグラスを空にした。
――ミユキさんって、お酒飲めないの?
――そうじゃないんだけど、うちね、京都なんよ。だから、此の後ミユキをドライバーにして東京見物と行こうかなーと。
――あー、悪いんだー。…で、一寸変な事聞いて良い?
――何?
――若しかして、逆?私、ミユキさんがタチだと思ったんだけど…?まさか?まさかの…?
橘の指を掬う“ゆりか”は、橘の爪先を、アルコールに緩んだ瞳で見詰めた。
――御名答、うちがタチでーす!
――うおおお!興奮して来たぁ!年下攻めっすか!先輩凄いっす!ミレイ!お代わり!
――飲み過ぎるなよ…
――いやいや、此れは酒で一層興奮せねば…、良いね、本当!
――ミユキねぇ、見た目血統書付きのプライド高い猫に見えるけど、ほんまは違うよ、ベッドん中じゃ子猫なんよ。前も後ろも判らん子猫。其れに絆されたんはうちやけどな。うちが初めてやもんなぁ?
――やぁだぁ!興奮する…、いや冗談抜きに…
――我も興奮して来た…、“先生”ネコか…
先生、という言葉に和臣は薄い唇を舐め、マスターを見た。
――あ、ミユキな、高校で国語教師してるんよ、見た目むっちゃ理系やけど。ほんまは違うよ、休みの日は読書ばっか、ブロクは読んだ本の感想ばっか、週に十冊は読破……図書館が恋人、活字こそ我が人生、…みたいな感じなんよ。うちが連絡入れてもな?読書の邪魔するなて怒るんよ…。うちはミユキの性格知ってるし、邪魔せんよぅしてるんやけど…。久し振りに会うやん?そん時でもな?本屋あったらあかんな…、小一時間迷うのん…。あんた、うちより活字の方がええのんか!て怒りたいけど、此ればっかしは、ミユキに惚れた運命やんな、黙ってるわ、あはは。
何処で打ち合わせしたのか、或いは監視でもしてるのか?と聞きたい程、橘の話す“ミユキ像”は和臣だった。
何を隠そう和臣、本好きが祟り此れで何度も振られて居る。
貴方は本があれば良いのよね、私に触れるより紙に触れるのよね、私を見るより活字を見る方が好きなのよね、私の匂い知ってる?貴方の鼻はインクしか受け付けないでしょうけど、図書館とでも結婚したら?と去って行く。
何で知ってんの、と耳打ちすると、知識が凄いからそんなだろうと時一先生が仰った、と囁き返した。
店内に流れるポップソングに、時一の高笑いが重なった。…後ろのソファ席の馬鹿女共が笑っているだけだった。
――うざ…
ジンフィズ
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