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歪んだ愛
第3章
―2―
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。」
「バルーンスカートにしましょう、そしたら大丈夫です。…多分。ロングブーツにします、脱いで下さい。」
此の時点で疲れ切った和臣は、パーテンションの裏に行く事もせず其の場でスカートとパンプスを脱いだ。
瞬間上がる悲鳴。
「変なもん見せんなよ!男のパンツなんか見たって嬉しくねぇよ!」
「oh…」
「ジーザス…」
脱ぎ捨てられたスカートを和臣に投げ付ける井上、絶望の表情で目元を隠す本郷、加納に至っては眼鏡を速攻で外し外方向いた。
「課長にサービス!」
「え?嗚呼済まん、何だ?」
加納と同じに眼鏡を外し、レンズを電灯に当てる課長は、一瞥も向けない。
「もう良いです…」
スカートとロングブーツを履いた和臣は姿見の前で仁王立ちし、ゴールドのバックルを腰に巻いた。
「此れでばれたら死のう。」
「大丈夫、あの店は間接照明しかないし、ばれたとしても女装癖のある変態刑事のレッテルが貼られるだけだ、問題無い。」
「大問題だね。」
課長の言葉を適当に受け流し、此れで良いか、とスーツに着替えた。トランクに必要な物を全て詰め込み、署を出た。
署から車で二十分の場所にある十階建てのマンション、1003の番号を押した。
掠れたソプラノ、観葉植物が左右に置かれるエントランスの自動ドアーが開き、エレベーターに乗った。
「いらっしゃーい。」
ドアーと共に花の匂いが和臣の花を擽った。
出勤前だからかジーパンとTシャツ姿の雪子、化粧も薄く、此れは此れで良いじゃないか、と和臣は思った。
通されたリビングには馬鹿でかいメイクボックスとアクセサリー、姿見が並んでいる。
リビングなのだが、あるのはコーナー型のソファとテーブル、生活感が余りない。リビングにある筈のテレビが無いのだ。
「テレビが無い家ってのも不思議だな。」
カウンターキッチンで珈琲を淹れる雪子は、映画しか見ないから、とカウンターキッチンから矢鱈離れた場所にあるテーブルにカップを置いた。
そうか、空間が多過ぎるのか。
本来ならカウンターキッチンの前にダイニングテーブルが置かれる広さだが、其処は何も無い。
「リビングで生活しないのよね。」
人が来た時しかリビングは使わない、寝室でしか生活しないから本当無駄よね、と2LDKの間取りに笑う。
「無計画じゃないわよ?借りた時は用途があったの。」
「男諸共用途も無くなったか。」
「後、通帳も一つ無くなったわ。」
からからと雪子は笑い、和臣の持って来たトランクを開けた。
顔全体で知る雪子の柔らかい指先、鼻先で呼吸する度花の匂いがし、手が動く度香水の匂いがした。
向かいのマンションに反射する夕日がリビングに差し込む。
「あ、カーテン引くわね。」
ずっと目を伏せた侭の和臣に気付いた雪子はカーテンを引き、振り向いた唇に和臣は自分の唇を重ね
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