第3章
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ボタンの無いジャケットなんか貰って如何するんだろうな。」
トリュフの様に柔らかい思い出を、ブランデーで楽しんだ。
「良く、御無事でしたね…」
「ん?何が?」
目の前で聞く雪子も、テーブル席の本物達も、夏樹の言葉を理解するのだが、此の天然間抜けの和臣は、何故自分が同情されて居るのか判って居ない。
「処女で良かったな、くふ…」
「あはははは!」
和臣の鈍さに我慢出来なくなった課長は吹き出し、菅原はテーブル叩いて迄笑った。
「あかーん、此処迄鈍い男は如何にも出来ん。」
「告白しても、首傾げた侭、俺も好きだよ、とか云いそうだ、あー傑作だ。」
「木島さん、そんなんで良く六年間無事でしたね…」
夏樹の言葉を漸く理解出来た和臣は、今更身震い起こした。
「女子校には明治から脈々と受け継がれるエス習慣があるけど、男子校に其の習慣は流石に無いだろう。」
「エス習慣…?」
「お姉様!宗お姉様!」
「おお妹よ!……此れがエス習慣や。」
菅原に抱き着いた侭課長は云う。
「女はくっ付く事で安心感を覚える生き物だ。」
「此れは生物反応で、犬でも猫でも、子供を抱っこするのは雌や。母親は抱っこする事で安心感を覚える。雄が雌に甘えるのは、母親を思い出すから。だから、男同士は余りくっ付かない。人間も動物も、雄は子育てをしないから、雄同士くっ付くと違和感を覚える。最近矢鱈ホモやバイが増えとるんは、父親が育児を始め、雄に触られる事に雄が抵抗を見せなくなったから。」
「因みに俺、今物凄く不愉快だ。」
「自分から引っ付いといて何云うか。」
「俺はベタベタするのが嫌いなんだ。不愉快だ。」
「だったら早よ離れぇ。こっちも気色悪いわ。」
二人のやり取りに夏樹は笑い、まどか達も云われてみればずっとくっ付いてた気がする、とストローを咥えた。
「そうなのか?」
「僕でも、どっちがどっちか判んない時あったもんなぁ。」
カラン。
時一の飲み干したスクリュードライバーが鳴いた。
「そう云えば、夏樹さんとまどかって、如何やって知り合ったんだ?ゆりかから、自分が紹介した、って聞いたんだけど。」
カシューナッツを食べる夏樹は、そうだったかな、と記憶を辿る。
「最初に会ったのはゆりかの方、其れは覚えてます。」
「何処で会ったんだ?」
「事務所ですよ。」
法律事務所…ストーカーの事で相談しに来たのかな、と思ったが、ゆりかは法学部の学生で、就職活動を始める三回生の頃から、夏樹の勤務する事務所で事務員のアルバイトをしていた。
「て事は、東条ゆりかも弁護士なのか?」
「まさか…、今無職ですよ?彼女。法学部出ただけで弁護士にはなれませんよ。」
「そうなのか…」
「一応、国家資格ですからね…、弁護士は…」
「医者と一緒ぉ。」
菅原の言葉に夏樹は向いた。
「俺等医
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