第2章
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。」
一体誰だ、こんな秀才に林檎等与えたのは。
蛇か?秀一なのか?
パッドを動かし、音声を拾う橘に皆黙った。
抑、何の目的がありそんなアプリを作ったのか。
「先生ぇ、なんか喋って。」
「侑徒ちゃん。」
「うっふっふ。」
キュン…とパッドから音がし、分析されたのは、“第一音声:信頼”“第二音声:歓喜”だった。
第一音声は菅原の“侑徒ちゃん”、偶々拾った橘の“うっふっふ”が第二音声。
「何で宗一で試すの?」
キュン…。第一音声:不信感。
時一の硬い声色をアプリはそう分析し、最悪其のアプリ!と喚いた瞬間、第一音声:憤怒、と出た。
一同に笑い、其れ百パーセントじゃないのか?と云った和臣の声を、第一音声:歓喜、と分析した。
「凄い!」
第一音声:感心。
雪子は益々はしゃいだ。
面白くないのは時一である。橘一般人が暇潰しに作ったアプリ如きに人間の心理状況が判っては、精神科医等不要になって来る。
「お飲物、皆さん何に致しますか?」
第一音声:従順。
橘は一人で其のアプリで遊び、其々から出される言葉を観察していたのだが…。
「宗。」
此の一言に橘の目付きが変わった。
第一音声:愛情。
誰だ、一体誰だ云ったんだ。
画面を見ていた橘には判らない。
「何や。」
第一音声:愛情。
え?と顔を上げると、ワイングラスを菅原に差し出す課長との情景があった。
「やだ、嘘…」
パッドを胸に押し付け、二人を凝視した。
「雪子。」
「なぁに?んふふ、和臣さん今日も格好良い。」
「…何云ってんだか…」
第一音声:愛情、第二音声:愛情、第三音声:羞恥。
画面と周りを交互に見る橘は、面白い程目が輝いた。
こう言う使い方もあるんやなぁ。
「木島さん。」
第一音声:無。
「御前、何飲む。」
第一音声:嫌悪。
無…?無ってなんや…。
すると面白い事に、加納の言葉全てに“無”と云う単語が付いた。
無反応、無関心、無感情。
加納の言葉には何も無かった。
え…?
そんな人間が居るのか、ノンアルコールビールの瓶を傾ける加納を橘は凝視し、時一を一瞬見た。其れに気付いた時一は自然を装い橘の横に座り、パッドを見た。
まさか、嘘だ。
夏樹から和臣へ連絡が来る迄、八時四十分迄の二十分間、加納の言葉に、一度として“無”以外のものは無かった。
何だ、此奴…。
感情を電子で表さない、表せない人種が一つある。
其れは、サイコパス。
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