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歪んだ愛
第2章
―10―
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れた奴”と云うスラングだ。和臣にスラングは判らず、此れは良く理解出来なかった。
其処に、加納がポッと姿を現した。
八時十分、加納にしては早く来た方だ。
加納、何故か判らないが、約束をすると“約束の時間に家を出る”という変な癖がある。なので、加納にしては珍しい時間だった。
此れ幸いと、早速加納に此の会話を教えたら、ナッツ?と聞き返し、課長がすかさず、精神病院が第二の実家、雪子を指し、聞いた加納は当然笑った。
其処に又、菅原が、橘と時一を連れ姿を現した。時一は井上を見るや否や「カウンセリング受けました?」とニヤつき乍ら聞いた。
「うるせぇよ、時いっちゃん先生。健全な肉体と精神を持ってるわ。」
「セックス依存性は立派な病気なので、早くカウンセリング受けて下さいね。後、アルコール依存性の治療もして下さい。死にますよ、貴方。」
何時も飄々と、のらりくらりと相手を交わす井上を黙らせ、苦汁を味あわせる時一が怖く感じた。笑顔な分、尚更。
「でね、課長。」
「なんだ。」
「俺、良い作戦思い付いたんだけど。」
「なんだ、云ってみろ。」
同じフロアにある、あのローザで、自分と本郷は待機している。
此の店の狭さを少し甘く見ていたかも知れない。密度が凄く、息苦しささえ感じる。
其れに、署で和臣が最初に指摘した警戒心、井上が感じるのだから夏樹は其れ以上感じる筈だ。最悪、カマ掛ける前に逃げ出す可能性があると指摘した。
「相手、弁護士だろう?加納さんが居る時点で不審に思うって。刑事は、コンビ体制。夏樹は其れを良く知ってる。悪いけど御宅等、プライベートでも連む程仲良く見えねぇよ。加納さん。」
「はい。」
「カマ掛け始めたら電話繋いどいて、俺、聞いとくから。」
「あ、そういう事か。」
理解出来た課長は井上の提案を素直に呑んだ。と云うのも、此のビルの構造にある。
此のミッドナイト キャットより、ローザの方がエレベーターに近い。逃亡しようとする夏樹を加納で引き止めるとして十秒、此の黒帯から逃げられるとは思わないが、夏樹が武道を心得ていたら話は違って来る。互いに構え、夏樹の方がコンマ早く技を出したら加納が床に倒される。
此の狭い店内で背負い投げでもやられてみろ、椅子は倒れ、其れで足が止まる。其の隙に逃げた場合、エレベーターはガラ空きで、いや、非常階段を使うだろう。
此処で、井上達が別の場所で待機して居た場合、十秒は時間がある。エレベーターを塞ぐ事は可能で、非常階段、此処に逃げ込めば袋の鼠である。
此の非常階段の一階の扉、セキュリティ上火災報知器が作動しない限り開錠されないのだ。外からは当然、中から開ける事も出来ない。ノブが無く、外からも内からも一見すると唯の壁で、火災報知器が作動すると押すだけで簡単に開く仕組みになっている。
そして此の非常階段とエレ
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