第2章
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「あの二人、なんかあるな。」
話を聞いた課長の目が動いた。普段ちっとも動かない癖に、一番動くべく時に動く課長は、良く良く獅子に似る。
其の課長の目が、口が、動いた。
犯人は確定されたのも同じだった。
「だがなぁ、御前等胡散臭いから一寸来いよ、が出来んからなぁ。其れでしょっ引けるなら、宗一をしょっ引けるもんなぁ。」
「菅原先生って胡散臭いの?」
「見るからに胡散臭いじゃないか。何考えてるか判らん、と云うか、あの研究所員、何や彼やで警察に目を付けられてるんだよ。大体が。」
警察は、三親等他親族に犯罪者が居れば就職出来ない決まりだ。けれど、菅原達研究所員は警察の人間では無い、あくまで警察に協力する善意の一般人で、刑務所にさえ入って居なければ受け入れられる。
先ずに主任の菅原。無意味にメスを持ち歩いて居た事に依る銃刀法違反。所持理由は、世の中物騒で何時刺されるか判らないから。職務質問した警察の方が、物騒なのはあんただよ、と思った。
文書担当斎藤。五年前、妻への精神的DVで行政調査が入っている。妻は二ヶ月精神科に入院したが、未だに別れて居ない。斎藤は、離婚出来るのだったら喜んで刑務所にでも入る、と行政書士に対し云ったが、妻が絶対に其れを認めなかった。斎藤は別れたいが妻が絶対に其れを認めない許さない、そんな事したらあんたを殺してあたしも死ぬ、なんであたしから此の人を奪うんだ、と迄言い出し、ヒステリー起こす妻を眺める斎藤の疲れ果てた顔に、DVを受けてるのは逆だと行政は結果を出した。
そして、科学担当、長谷川秀一。
云う迄もなく、あの電気に依る傷害で、凶悪性と異常性から二年、精神病院に隔離されて居た。
本来なら、出る予定では無かったのだが、菅原が出した。其の秀一を担当をして居たのが時一で、貴方に頼まれたら断れませんね、とあの異常者を世に放った。
正し条件が一つ、時一の目の届く場所に居る事。時一の目が無い時は、菅原が監視する事。
だから秀一は、仕事が終わった後でも菅原に付き纏われ、言い換えれば、菅原の一言で秀一は又精神病院に送り返される。
菅原に対し異様に腰が低いのは其の為である。
秀一の性格を考えれば、其れこそが異常な行動で、不思議な事もあるもんだなと和臣は思って居た。
五人中三人が何かしら問題有りで、一人に至っては変人と決定されて居る。
そんなのを雇って良いのか、と思うのだが、警察は人間性より其の頭を買った。
良く云うでは無いか、犯人なんか如何でも良い、大事なのは犯人逮捕では無く“警察の威厳”だと。面子が保てれば、其れで良いと。
故に、研究所一の奇人を誇る秀一は、人間性より知性、と云って居る。
無理も無い、あの中で一番奇人なのも、一番優秀なのも秀一なのだから。
要するにあの機関、斎藤以外、全て菅原の手の伸びる範囲で構成されて居る
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