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歪んだ愛
第2章
―9―
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律は、今の所日本には無い。法にも縛られなければ、書類契約も無い。異性結婚に一番近いのは養子縁組であるが、其れには面倒な手続きが必要。異性結婚みたく、婚姻届けを書いて提出…では無いのだ。
そんな面倒な事があるから、日本の同性愛者等は“同棲”と云う形で結婚する。
課長が此のパターンで、左薬指にはしっかり指輪が嵌っている。
「だから付き合ってない。半年位不純な関係だっただけだ。」
「其れを世間では、浮気って云うんですよ。」
「違う、浮気じゃない。」
「じゃ、本気…?」
和臣の言葉に課長は無言無反応で俯き、頭を抱えると其の侭机に突っ伏した。
あの獅子が、戦意を喪失した。
何気無く云った一言で課長を追い込むとは思わなかった和臣は動揺し、井上に助けを求めた。が、和臣と関わりたくない井上は、あんたが追い込んだ、東北勤務おめでとう、と止めを刺した。
「一寸、ねえ課長…」
「顔も見たくない、御前もう帰れ。経費で落としてやろうと思ったが、御前の自腹な。」
「待ってよ、冗談じゃないよ!十人分の寿司とか無理に決まってんじゃん!馬鹿じゃないの!?俺の給料知ってるでしょう!?」
「あざーす、木島さん。ゴチんなりまーす。」
「被疑者の為に大金使うなんて、刑事の鑑ですね。」
和臣が嫌いな井上と本郷は、此れでもかと和臣を攻撃した。
開け、今度は御前の胃に穴が開け。
本郷の釣り上がる口角はそう云っている。
「加納、助けて…」
「御断りします。」
笑いを堪えていた加納だが、言葉を出したが最後、弾けた様に笑い出した。
響く着信音。
「誰だよ!」
「俺俺ぇ、俺だよー。」
「掛けて来るな、変人!」
「今夜暇?」
「煩い!破産宣告書類書かないといけないから忙しいわ!」
獅子の勝利の咆哮に、狼は虚しく啼いた。


*****


「何だ、彼奴。」
電話の画面を見乍ら首を傾げる秀一は、自分を見上げる猫の頭を撫でた。
「あの。」
橘の声に猫が移動する。
「木島さんから電話なんですが、今夜全員、あの店に集合、らしいです。」
「は?」
事情を聞いた秀一は、何故自分迄呼ばれるのか理解出来ず、行かないと椅子を回転させた。
「拗ねんな拗ねんな。」
秀一の頭をぐしゃぐしゃと撫でる菅原は、課長から着たメール文面を見せた。
「愛人の誘いメール俺に見せて如何すんの。」
「監視出来ないから問題起こすなよ?て事な。」
納得した秀一は、誘う様に動く猫の尻尾を追った。
サンダルにジーパン、ゴロゴロと身体を擦り寄せ、尻尾を絡ませ、抱っこ、と前足を伸ばす猫を追い続けた。
「斎藤さん、今日来ます?」
「誰が行くか。」
「ですよね…」
顔を寄せただけで猫は自ら斎藤の肉厚な唇に口を付け、数回舐めるとすとんと降りた。
「斎藤。」
「ん?」
「今
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