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歪んだ愛
第2章
―9―
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。斎藤以外の研究所員の絶対者は菅原で、小規模過ぎる宗教に見える。
そう、ゆりかとまどかの関係の様に、狭い範囲な故、密度が濃い。そして、解け難い。
「で、木島。」
「はい。」
首を後ろに倒し、右半分前髪で顔を隠した課長は、一層鋭さを増した目で和臣を見た。
「夏樹冬馬の声だったか?」
署に帰り、一番最初にした事は云う迄も無く橘から渡された肉声を聞く事、パソコンに読み込ませ、ヘッドホンを付けた。
記憶する夏樹の声、ヘッドホンから流される声、其の二つが頭の中でぐちゃぐちゃに混ざった。
「若干違う感じもしますが、夏樹冬馬の声に似ていたと、思われます…」
吐き出したが最後、信じたくない気持ちの方が勝った。
何年俺は刑事をしてるんだ?人を見たら、先ず疑うのが仕事だろう?情になんか、流されるな。そんなんじゃ、刑事なんか出来やしない。捨てろ、情を捨てろ。情を持てば、真実から遠去かる。
大きく聞こえる息遣いに肩が張った。
「夏樹冬馬と、科捜研の橘さん、菅原さんを呼べ。」
「待って…!」
「あ?」
獅子の眼光に、怯む狼。
なんて情けないんだ、俺は。
同じに群れを成す習性を持つ獅子と狼。だからこそ、トップに歯向かう事が即ち死だと、本能で知っている。
斎藤の様に、群れを成さない虎であればどれ程良かったか。
虎…。
嗚呼、そうか、だから斎藤は、菅原の手の内で回る場所で外部から来たのか。
虎だから、絶対に群れを成さないし、自らが群れに入ろうともしない。
群れを成すのは、所詮弱いから。自分一人じゃ何も出来ないから。
狼は判る、イヌ科は基本、犬でもハイエナでも群れで生活する。
ネコ科は逆で、単独が基本だ。だのに、獅子は群れを成す、此れは雄に狩り能力が無いからだ。雌(部下)に狩り(仕事)をさせる癖に、雄は一番先に其の苦労を食らう。
課長は、見れば見る程ライオンだ。
そして自分も、其の群れの一部にしか過ぎない。
「明日…いや、今日の夜迄、待って。」
「逃げたら、御前を飛ばしてやるからな、お望み通り…東北に。」
机の上に置かれた電話が震えた――和臣さん、今日はいらっしゃる?
課長の舌打ちに湧き出る情を喉元で止めた。

店って何時から?
八時。
じゃあ、八時に行く、所で、寿司、好き?
何?いきなり。
好きかなって。
大好きよ。
じゃあ、取ってあげる、知り合いと一緒なんだけど、今日、祝い事なんだ。
まあ、じゃあうんと美味しいお酒用意して於かないと。
後、頼み事がある。

「夏樹さん、世谷署の木島だけど。」
「嗚呼、木島さん。先程は如何も。」
「さっきの事だけど。」
「さっき?…嗚呼、宴会の事ですか?やだな木島さん、律儀な方ですね。」
「まあ、な。其れの事なんだけど、仕事、何時に終わる?」
「六時に渋山でクライ
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