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歪んだ愛
第2章
―8―
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す。今の時代、パソコンでさえ自分で作る方が多いですが、粗悪にも程がある。」
何かを支えにしないと歩けないと云わんばかりに橘はデスクや壁を伝い、休憩室の椅子に座った。カチカチとパソコンを操作し、和臣に向いた。
「現代のボイスチェンジャーは、パソコンにソフトを読み込ませ、調律し、其の音源を流します。現代の歌手や、ボイスチャットで良く使われる声が其れです。此のボイスチェンジャーは、極端な話ですよ、木島さん、電子歌手、と云うものを御存じですか?」
「嗚呼、初音ミク、とかだよな?」
「そうです、初音ミクは、人間の声を読み込ませたソフトです。“マスター”と呼ばれる人が、如何に人間らしく聞こえるか、を重点に調律し、歌を歌わせる娯楽音楽ソフトです。優秀なマスターであれば、其の初音ミクとやらは、まさに人間が歌っている様に滑らかに歌わせる事が出来ますが、そうでないマスターの初音ミクの歌声は、如何にも機械染み、一語一句を淡々と出します。此のボイスチェンジャーは、其れにも劣る粗悪品です。大昔過ぎます。」
云って橘は、テーブルに置かれるパソコンを操作した。
「此れは、パソコンにインストールした、音声変換フリーソフトの音源です。ワンオクターブ落とした音域で、俺の声で申し訳無いのですが。」
パソコンから聞こえた低い声、元が橘の声だと聞かされ無ければ、普通に重低音な声の持ち主だと思う。
「そして此方が、変声前の高音女性音域に合わせた声音です。俺の音域が女性のアルト音域に近いので余り違いが判らないと思うのですが…」
低音域と全く同じ言葉だが、其の音声は小学生或いは修学前児童の様に甲高く、キンキンと耳に残る。
妹を毎日幼稚園に送り迎えして居た和臣だから、此の幼児特有の甲高い声が本物と大差無い事に気付いた。極端な話、此の音声変換ソフトで変換した声で、変な人云々の知らせを受けたら、信じてしまう。
「俺は、生憎機械に疎いですが、現代の声音変換ソフトを舐めたら駄目です。俺みたく音声分析をする人間ですら、プライベートで此の変換された声をボイスチャットで聞いたら、先ず相手の性別は判らないでしょう。其れ程現代の電子は進化しています。“ボイスチェンジャー”“高性能”“フリー”で検索し、一番評価の高かったフリーソフトを使用して、此の性能です。一万も出せば買えるソフトでやれば…お判りでしょう。現代は其れ程、電子に関して進化して居ます。だのに、犯人の使用したボイスチェンジャーは。」
十年前の秋葉原でも見付からないであろう粗悪品、橘はそう云った。
「唯犯人は、意図的にそんな粗悪品を使ったとも取れます。言い難いんですが、現代って、便利な様で、不便なんです。パソコンのOSを変更しますよね?そしたら、其れ迄に使ってたソフトや機材が使えなくなった事ありませんか?逆もしかりです。」
「嗚呼、ある。」
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