暁 〜小説投稿サイト〜
歪んだ愛
第2章
―7―
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
言わなあかん流れか?
――まさか!御主童貞か。憐れな…
――すんまへん、十七ん時にもう済んでます。なんで食事中にそんな話すんねん!然も息子と!
――なあ冬馬。
――何やねん…
――今日、一緒寝よか。
――なんで…?話繋がってませんけど。
――お母ちゃんの話が繋がらんのは何時もんコトやないか。
――自覚あるんかい。
――て言うか冬馬、あの人に似てないな。…あら、ほんまあの人の子やったんかしら…、あら、しくった。向こうやったか!
――うん、お母ちゃん、取り敢えずわしに食事さしてくれ。弁解は後でたっぷり聞いたるから。

成人して母親と一緒に寝る事になるとは思わなかった。サイドボードの灯りで書類を読む夏樹の横顔を、顔半分布団で隠した母親は見た。じっと見詰め、気が散る、と云うと一旦頭迄すっぽり布団を掛けるのだが、一分もすると、又、ちら、っと見た。
真夜中に鳴った電話、其れは依頼人からで、暗い静かな部屋では母親にも内容が筒抜けた。
依頼人の錯乱する声、内容は調停中の妻に子供を誘拐された。元から危ない相手だな、と思っていたが、誘拐するとは思わなかった。依頼人に警察に通報する事を伝え、続けて妻側の弁護士に連絡を入れた。聞いた先方弁護士は、あっちゃー、やってくれたなぁ、と負けを認めてしまった。
電話を切った夏樹を、母親は楽しそうに眺める。

――あんた、ええ男に育ったな。
――何…?気持ち悪い…


もうお母ちゃん、要らんな。安心した。


少ない珈琲に、波紋が広がった。和臣達が驚きの顔で見る理由が判らず、瞬きする度顎から何かが落ちる感覚がした。
「大丈夫か…?」
「え?」
「いや、御前、泣いてるぞ…?」
「え?」
下瞼を触ると、濡れた。
「あは、カッコ悪…」
カウンター内に座るマスターが、店員が、黙って夏樹を見ていた。其れに気付いた加納が、冷たい目と声色で「見世物では御座いませんが」と散らした。
「そんな母を見て育った僕は、簡単に離婚する女が嫌いだ。そんな女に、親権は渡さない、絶対に…」
テーブル端を睨み付ける夏樹の目は憎悪に燃え滾り、加納に叱責受けた店員が、詫びだと云わんばかりに夏樹と和臣のカップに珈琲を継ぎ足した。
「なあ先生。」
「はい?」
「先生って、派手な女が好きなのか?」
「え?」
詰まった鼻の通りを少しでも良くしようとカップに鼻を寄せる夏樹は、突拍子も無い和臣の質問に首を傾げた。
「派手、とは。」
「全身ブランドだったり、化粧が濃かったり。」
「嗚呼、確かに云われてみたら、化粧の濃い女、好きですね。綺麗じゃないですか。…そうです済みません、僕、本当にマザコンなんです…」
夏樹の母親は、当然だが夜働きに出ていた。詰まり、派手な衣装と派手な化粧。
当然、周りの父兄からは、父親は無
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ