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歪んだ愛
第2章
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すよ。したら母、初めて自分の名前に四季が入ってる事に気付いて、夏に春やて、あはは、祖母(おかあちゃん)阿保ちゃうかー、あたし秋生まれよぉ、あはあは、て笑い出しましてな。いやいやおかん、其れ言うたらわしとかまんま冬やんけ、…嗚呼そうなぁ、まさか夏樹に戻れるなんて思わんかったものぉ、夏に冬、あんたややこしいなぁ…そんな名前に誰がしたん?、…誰が付けたか!お母ちゃんちゃうんか!てね。」
顔面をくしゃくしゃにし笑う夏樹に釣られ、和臣も笑った。本当に母親を愛していたのが目で判る。あのOL達の様にキラキラとしている。
「やぁっと、守れる立場になったと思ったのに。なぁんも出来んかった。母の人生って、一体何だったんでしょうね。」
遠い思い出を羨望する夏樹の目、戻れるものなら戻りたい。
母親が夏樹に残した保険金一億円、母親の地獄とも云える二十六年の人生の対価にしては安過ぎた。けれど、一億円…いいや、此の先一生分の給料で時間が戻せるなら、喜んで払う。母親以上の苦痛と地獄を背負う事になっても、あの晩、あの朝、母親が死ぬ前に戻れるなら厭わない。
母親が自殺する前の晩、“最後の晩餐”の内容は、幼少時代夏樹が好きだった物が並んでいた。父親の所為で金回りは余り良くなかったが、母親親族と会食した時、出て来たお子様プレートに夏樹ははしゃぎ、母親は家でも其れを作った。
デミグラスソースのオムライスにハンバーグ、塩胡椒で味付けしたスパゲッティを絨毯に並ぶ海老フライ。
窶れ切った母親は、其れ等を食べる夏樹を笑顔で見ていた。
幼少時代からずっと。
味も愛情も、何一つ変化は無い。
其の晩もそうで、わしもう子供ちゃうねん、と夏樹は云ったが、子供の様に食べた。其れを見る母親は、笑顔で、湾曲する目から今にも涙が溢れ落ちそうだった。

――なんで泣くねん…
――んー?大きなったなぁて、しみじみとね、思てる訳ですよ。
――泣くか笑うか、どっちかにしなさいよ…
――男ん子産んでて良かったぁ、こぉんな頼りなるんやもん。あの人に似たら如何しよーとか思てたけど。
――エグい事言うな…
――長男さんですね、云われた時、うわぁあかーん、あの人になってまうがなーて思たんやけどなぁ。わての教育が良かったんですね、うんうん。
――お母ちゃんが不幸なったんは、偏に貴女が世間知らずのお嬢さんだったからやないですか。
――世間て怖いなぁ。
――もう一寸、男見る目養って結婚した方が良かったかもな。
――お?言うたな?…いやほんま冬馬、避妊だけはちゃんとしなさいよ…?
――……海老フライ詰まったがな…
――阿保やらかしたー、ほんま、阿保やらかした…
――其の産物の目の前でよぅ云えますね、貴女。然もわし今食事中…、止めてくれ…
――え?…女知らんとか…そんなん言わんよな…?
――…何此れ、
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