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歪んだ愛
第2章
―6―
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藤さん、変な人でね。」
「うん。」
「虎飼ってるんだよ。」
「は…?」
煙りを吸い上げるファンの音が無駄に聞こえる。
「何で又…」
「本職で中国の田舎に行った時、虐待されてるの見付けたんだって。」
「うん。」
「で、斎藤さんの奥さんの実家、すっ…ごいリッチなの。」
「うん。」
「日本円で三千万、斎藤さんの為に奥さんがぽーんって出したの。其れが換金されてみなよ。田舎だよ?都市じゃないんだよ?大富豪だよ。虎一匹渡すだけで。」
「うん。」
「頭おかしいよね。」
其れと如何、研究所で猫を連れ歩いているか繋がらないが、途轍もなく変人なのは判った。
虎一匹に三千万と云えば高いだろうが、何、金持ちの金銭感覚等無いに等しいのだ、フェラーリ一台買ったと思えば良い。そうで無くとも、喫煙所の外、廊下で暇そうに電話を弄る加納の車は総額二千万なのだから。
「だけど其の斎藤さんの口癖。」
「うん。」
「離婚したい。」
和臣の笑い声に加納は二人を一瞥した。
斎藤は、無理矢理にフェラーリを買わせ、別れ様と云って居るのだ、笑うしかない。ホストでももう少し温情はあるだろうに。
「其の虎って…」
「其の虎を飼う為に一億五千万で豪邸建ててる。勿論奥さんは、ええよええよ、八雲がええならええよぉ。」
「其れで、離婚したい…?」
「離婚したい。」
「何時か刺されるんじゃないのか?」
「いやぁ、刺されないよ。奥さん、斎藤さん引き止めるのに湯水の如く金出してるもん。愛情の油田?見てて可哀想になるんだけど、奥さんが其れで満足なら良いかなって。で、あの白猫ちゃんは、奥さんが拾って来たの。其れを身肌離さず可愛がってんだから、奥さんには嬉しいでしょうね。こういうのをなんて云うか知ってる?」
大きな目に見詰められた和臣は首を振った。
「共依存。」
「共、依存…?」
「東条ゆりかが、其れです。誰かに依存しなければ自分を持たないまどかさんは、生きて行く事が困難です。僕達からしてみれば理解に苦しみますが、まどかさんからしてみても、僕達は奇妙に映ります。極端な話、電車一つ乗るにしても、まどかさんは誰かに“確実に”目的地に着く切符を買って貰わないと乗れません。自分で買った切符、乗った電車で本当に目的地に着くのか……若し着かなくても「あの駅員の指示に従ったのに…私の所為じゃないわ」と思えるからです。依存性人格障害の特徴は、異常な迄に自分を低く見、自己犠牲をして迄相手に合わせる事です。自己犠牲、此れが、東条まどか最大の特徴です。そして、共依存。ゆりかさんは、まどかさんが自分を守っているという気持ちで動いています。病弱なゆりかさんはまどかさんに依存し、依存される事でまどかさんは一層自己犠牲を働かせます。ゆりかを守るのは、私。其れだけの為に存在して居たまどかさんは、夏樹冬馬で変
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