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歪んだ愛
第2章
―4―
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雪子(ゆきこ)、グラス引け。」
雪子と呼ばれた女は猫みたく素早い動きでグラスを引いた。目尻から跳ねたアイラインと長い付け睫毛が一層雪子を猫に見せる。暗い店内でもはっきりと判るキラキラした瞳、赤いマニキュアが塗られる爪は手入れ仕立ての様に尖っていた。
じっと自分を見る和臣に雪子は小首傾げ、ゆるりと微笑むとグラスを渡した。
男三人の目が和臣に集中した。
「ほらな、言った通りだろう。」
課長の声に和臣はテーブル席に寄り、ワインが注がれるのを見た。
「木島さんて、こんなんが趣味なんか。」
「うん?」
「こんなん、とは失礼だわ、菅原さん。」
「あはは、堪忍。」
菅原のグラスを下げ様とする雪子に菅原は慌てて謝罪し、和臣にグラスを向けた。
「なんぼなったか、何て聞かんぞ?おめでとさん。」
「有難う、忘れてました。」
近付いたグラスに自分のグラスを寄せ、続けて秀一に向けた。そして課長にきちんと向けた。
「有難う御座いますね、課長。」
「いや、本当はな、一時間前に思い出しただけなんだよ。携帯見て、十四日?木島の誕生日じゃないか、って。で、其れを二人に云ったら呼べ呼べと煩い。」
「だから空いてたんですね、ワイン。」
「飲んだ後に気付いてな。そしたら宗一が、煙草あげようって。」
「で、俺は赤マルって云ったの。」
「俺もなぁ、木島さん見た時、此の人赤マルっぽい!て思たんやけど、同じモン送んのもやぁやし、違ごたら敵わんやん。でぇ、コンビニ行って、赤い煙草なんかあるかなぁて見てたら赤ラークがあったんよ。」
そんな無駄な推理せずに、毎日自分を見る課長に聞けば良いじゃないかと思うのだが、趣向品は本当に人の気持ちが大きく表れる。
喫煙者の人間は他人の煙草でもあっさり覚えられるが、課長達非喫煙者、加納の様な嫌煙家には全て同じに見える。喫煙者から云わせて貰えば全く違うのだが、非喫煙者には無差別にサリンを振り撒いているのも同じなのだ。
金出し何を有毒摂取してるかと思われるが、此ればかりは仕方が無い。税金納め死に急いでる、としか答え様が無い。
時たま一般人から「俺達の税金で生きてる癖に!」と公務員は云われるが、公務員だって一応は住民税やら保険料やら年金は納めている。警察や役人だけが何故そんな事云われるのか判らない、だったら、国公立大学附属病院に勤務する医者(菅原)も、大学院の研究所で働く学者(秀一)も、皆税金泥棒ではないか。私立大学の研究施設とて国からの助成金があるではないか。
大体、月三十万も貰っていないのに此の扱いは幾ら何でも酷い。公務員というだけで目の敵にされる。公務員に親でも殺されたのかと聞きたい。
生活保護受給者に暴言吐かれた時は絞め殺し、其の税金を自分に回そうかとさえ思った事がある。
一度本郷が、不正受給では無く本当に病気で働きに出れな
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