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歪んだ愛
第2章
―3―
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たい。常に薄っすらと笑みを張り付け、笑うと気味が悪い。
生活安全課でゆりかの警備を頼み、其の侭二人は東条邸に向かう。流れる景色を眺めていると、普段なら気にも止めない花屋が目に止まった。いきなり、ハンドルを握る腕の前に和臣の腕が伸び、停車を云われた加納はブレーキを踏んだ。後方車から盛大にクラクションを鳴らされたが、和臣は気にせず歩道側に叫んだ。
「木島さん!」
「店員さん!」
加納の冷や汗も気にせず、助手席の窓から和臣は花屋の店員に叫んだ。何事かと寄った店員は窓に顔を寄せ、云われる侭ミニブーケを二つ持った。代金を払い、車は静かに動いた。
「何で買ったんです?」
加納の問いには答えず、車は軈て目的地に着いた。インターフォンに移った和臣の顔にゆりかは驚き、そっとドアーを開いた。
「ええと、何か?」
暫くの間警備をすると云うとゆりかは小さく頷き、中に促したが和臣は断った。其の代わりブーケを二つ渡した。
「御前、乙女座だったろ。」
「はい。」
「今が丁度、乙女座の周期だ。誕生日プレゼント。一つはまどかのな。」
和臣が綺麗に笑う程、好意が無いと判る程ゆりかの頬は熱くなった。
勘違いしてしまいそう…。
和臣の行動は、偶々誕生日が近かっただけで意味は余りない。此の無意識の優しさが、時には和臣を苦しめる事もある。ゆりかに其の傾向は見られないが、此れが妄想型の女だったら大惨事になる。
世の中には、微笑み掛けたり目が合っただけで妄想を特化させる輩が居る。
ゆりかは其の点普通であるから問題無いが、突然の出来事に目が熱くなった。
「有難う、木島さん…、自分でも忘れてた…」
「なんかあったら、直ぐ連絡しろよ。」
ゆりかの栗色の髪を少し乱し、和臣は車に乗った。運転席の加納も少し笑って居る。其の発進させた加納は、暫くするとハンドルを握り締め笑い出した。運転が不可能になる程笑いは出、停めると身体を窄めて迄笑った。
「なる程、そうして女性を不幸にするのですね。」
「不幸って何だよ。」
「勘違いさせ突き放す、何て酷い方だ。くっく…」
「云うけど、俺、そんな持てないからな。遊びばっか。本気になった女には捨てられるし。」
「交通課の女性には人気ですよ、木島さん。」
「あー、趣味じゃ無い。モンスターばっかじゃないか。」
笑いが治った加納の肩を叩き、発進を促した。
振動。
ジャケットの内ポケットに入る電話がメール受信を知らせた。取り出した和臣は番号表示に訝しんだが、添付される写真に口元が緩んだ。

まどかも喜んでます。

写真のまどかが、微笑んだ。
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