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歪んだ愛
第2章
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するに相応しい精神科医なのかと和臣の顔は不自然な笑みを蓄えた。
「妹が、強姦に遭ったんだ。もう十年も前だ、俺が大学生の頃。妹は後遺症で家から出られなくなった…、俺は、姿の見えない相手を、ずっと追ってる…、刑事になれば見えると思ったのに…」
「大丈夫、ゆっくり息を整えて下さい。」
時一の温かい心臓の音に視界が揺れ動いた。蓄積する加害者への憎悪が肥大した。
「もう、意味が無いんだ…、強姦の時効は十年…、成立してる。だのに一時の私欲で妹の人生を目茶苦茶にした犯人はのうのうと笑って生きてる。彼奴は未だ中学生だったんだ。見事に妊娠してたよ…。元から身体が弱い女でな、結果未熟な身体で掻爬した彼奴は限界で、子供が産めなくなった。判るか…?何よりも大事に思って居た妹の全てを壊された俺の思いが…」
全く知らない和臣が、妹から妊娠していると聞かされ、其れが発覚する迄約三ヶ月妹は被害を黙っていた。元から生理が不安定な妹で、まさか此れで妊娠する等思っても居なかった。二三ヶ月生理が来ない事等ザラで、今回もそうだろうと思っていたのだが、明らかに違う身体の訴え、トイレで気絶した妹の手に転がる二本の線が並ぶ妊娠検査薬を見た和臣の絶望と云ったら無かった。そして聞かされた事実に和臣迄吐いた。
十年以上も昔の事なのに、今朝の事に思えてならない。いや、本の数分前。ずっとあの時間で止まっている気分だった。
「木島さん。」
時一の声に和臣は身体を離し、拷問の様な痛みと記憶を繰り返す頭を触った。
「ゆりかさんを、保護して下さい。犯人の狙いは、ゆりかさんです。」

愛してるよ、ゆりか……

不愉快な変遷声が、一層和臣の頭を締め付けた。
時一も菅原も云っていた、東条まどかは、ゆりかに成り代わって居たと。
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