第2章
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だったら物理で募集行きますぅ!云うてなぁ。アホやろ。受かっとる、アホや、可哀想。内科の父ちゃん泣いてはるわ。内科は放射線治療するやろ。」
菅原はキリキリ笑い、橘の艶やかな髪を見た。
ヘッドホンを付け、SDカードから読み取った動画の音声を分析する橘がふっと顔を上げ、菅原を見た。強化硝子のドアー越しに視線を合わせた菅原は、何も無い、と手を振った。
「すぅぐこっち見よんのよ。悪口やとほんま直ぐな。」
「誑かすのが御得意の様で。」
「んー?俺がゲイて何処で知った?あかん子。」
「内の課長から聞いた。彼の方もゲイだから。」
「…嗚呼、あの人な、知ってる。寝た事あるもの。宅の課長、ど豪いサディストやけど超絶ネコやったわ。美味しく頂きましたぁ、ご馳走はん。」
「嘘…!え?嘘だよね…?」
和臣をあしらう様にバラバラとファイルを開き、ホワイトボードに貼られる四枚の内、足の裏が映された写真を菅原は指した。
和臣にはもっと聞きたい事はあったが、此れは署に帰り直接課長に聞いた方が良いだろう。課長って尻軽なんだね、と。彼のサディストの顔面が真っ赤に燃え、自分と菅原を怒鳴り散らす事を想像すると笑えた。
「東条まどかの足の裏には細かい裂傷がある、此れは木島さん知ってるな?」
「はい。」
片方脱げた靴、其の足の裏に裂傷があるのは覚えている。
「此れが不思議な事に、こっち…右足にも裂傷が見られる。靴を履いてる側に。詰まり東条まどかは、殺害当日以前にも裸足で走った事が判る。…で、此の裂傷が、足先に集中してる。」
足裏の写真の横にもう一枚、左右の足裏を映した写真を貼った。
「で、此れで判ったんが、東条まどかは、短距離走が得意やて事。」
「短距離…」
菅原は掌をテーブルに付け、説明を始めた。
「マラソンみたいな長距離は、こういう風に、足全体を地面に付けて弾む様に走る。何でか。爪先を立てると膝から腿…大腿四頭筋て云うんやけど、其処にかなりの負担が掛かる。体重が地面に向かう圧と、地面から反動する圧が、屈折する膝に集中する為、長距離の場合膝に掛からない様踵でバウンドを付ける。一方で短距離は。」
べったり付ける掌を浮かせ、指先だけをテーブルに付ける。
「地面に接する面積を少なくする事で、速さを出す。足裏って云うんは、身体の全てを支えてる。身長と足のサイズが関係するのは此の為、そして一番変化を見せる場所。人間が成長する過程で一番最初に伸びるんが足。這い這いをする赤ん坊の足裏は小さいけど、歩行を覚える時期に身体が成長すると、支える為足が大きくなる。一八〇センチと一五〇センチの人間の足の大きさは一緒じゃない。足の遅い奴の特徴は、身体に対して足が小さい。此れはバランスを保ち歩く事を身体が命令するから。ハイヒールを履いた女の足が蛞蝓みたく遅いのは、地面に接する面積の減少、前
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