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歪んだ愛
第1章
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るぞ、判る。御前、見るからに綺麗好きそうだもん。」
「掃除した時、ソファの下からストッキングが出て来たのは驚いた…。何であんな所から出て来るんだよ…」
目元を押さえ、其の光景を思い出した夏樹は嘆いた。まどか本人に聞いてもなんでかなとしか云われなかったらしい。脱いだストッキングの所在も判らず平気とは、まどかは相当暢気な性格を持つ。
綺麗好き二人の話を聞き乍ら加納は手帳にペンを走らせた。
ソファの下からストッキングが出て来た、等、菅原も要らない情報だろうが一応書いた。心理担当の時一の役に立つかも知れない。
抑が、夏樹を調べろと云ったのが時一なのだから。
響く電話の呼び出す音。自分の着信音で無いと判る三人は電話を取り出す仕草をしなかったが、夏樹一人が青い顔で発信源に視線を落とした。
「嘘だろう…」
「呼び出しだよ、先生。」
「違う…」
取り出した電話。画面を見た夏樹の顔色は一層悪くなり、鳴り続ける電話をベッドに捨てた。
「此の着信音は、一人しか居ない…」
東条まどか。
ディスプレイにははっきり浮かんでいた。
「……随分だな。」
夏樹の代わりに和臣が出た。つ、と電話は切れ、掛け直したが繋がらず、今度はゆりかが怯えた。
響く着信音。
手の平に収まるたった其れだけの存在が、四人には途轍もなく恐怖を与える魔物に見えた。
東条まどかという、魔物に。
「いい加減にしろよ…」
余りの恐怖にゆりかは泣き出し、怒りに潰される和臣の低い声だけが響いた。
「御前は、誰だ。」
声は無い。音の無い時間が過ぎた。
「何で殺した。」
瞬間、和臣の背は凍り付いた。人間と思えない金属の擦り切れた様な笑い声がし、其の大きさに和臣は電話を耳から離した。小さな箱から出る金属系統の音、人間が笑って居るとは思えない。恐怖でしかなかった。
和臣の手の中で流れ続ける笑い声に加納も引き攣った。声が出なかった。座り込み泣くゆりかを見た和臣は肩を抱き、電話を床に置いた。夏樹は頭を抱え、荒い呼吸を繰り返していた。
正気じゃ無い。
そう思い、和臣はカメラとして使う電話を取り出し、床に置いた電話を動画で映した。音が小さいかと思いスピーカーにしたが、笑い声とゆりかの恐怖が強くなるだけで、然し和臣はカメラを向け続けた。和臣のジャケットを握り締めるゆりかの耳を、此の不愉快な犯人の笑い声から逃す様に片手で押さえ、胸に付けた。
大丈夫だ。
電話に届かない程の小さな声で和臣が囁いた瞬間、電話は静かになった。
「……気が済んだか…?」
和臣は電話に向かって云った。
「…か…りか………」
金属系統の音の正体はボイスチェンジャーだった。


ゆりか……愛してる……


「嫌ぁあああああああああ!」
電話から出た言葉に全員凍り付いた。ジャケットから離した手で自分の
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