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歪んだ愛
第1章
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痒くも無い、此の職務に就く倍率、考えたら従うわ。俺等が全員辞めたら…、警視庁の科捜研は機能停止する。鑑識が有能なら問題無い、けど見て見てみぃ、七割は俺等に来るわな。此処におる全員そうや。あの丸眼鏡にかて受け皿がある、物理の奴にかてある。せやろ、長谷川。」
「仰る通り、菅原先生。俺には此の頭脳を、涎垂らし待ち受ける研究所が世界中にごまん存在する。博士号って、役に立つんだよ?和臣。」
にんまりと、蛇が獲物を見付けた様子で笑う秀一がドアーに居た。
「わいかて文書分析医やけど、元は、ちゅーか基本が考古学者や。此処から破門されても、わいには元居てた場所がある。問題無いねん。」
丸眼鏡が、野生の誠の王者は自分だと言わしめんばかりの虎の眼光で和臣を射抜いた。
「ええ、俺にも、偶々受けて受かっただけですので、余生過ごすには充分な場所がありますから。問題ありません。」
ニュートンボールを無表情で眺めて居た奴が…一人称で男と判った物理担当医が妖艶に、其の漆黒の髪を顔にはらりと掛け云った。
和臣の口角は、無意識に吊り上がった。
「頼もしいな…」
「せやろ?もっと頼ってええよ。」
「怖いよ、京都男。」
「あれ、俺が京都てよぅ判ったな。」
菅原は笑い、和臣の持つ電子煙草を吹かした。
「判るよ、其処の大阪の丸眼鏡とニュアンスが全然違うもん。」
「ほんまぁ?嬉しいなぁ、いっつも間違えられんのよぉ、丸眼鏡と。」
「そうそう、科捜研の関西弁、え?何方?て。」
「全然違うんになぁ。」
「おっしゃ、益々加勢する気起きたわ。任せとき。本庁ぎゃふんと言わせたるで。初めてや、東京来て間違えられんかったの!其れで無くともわい京都寄りの方言なのに!」
「主任辞めたら元も子も無いのんな。」
「せやな、先生ぇ。」
「そやなぁ。」
二人の笑い声に和臣は釣られて笑い、ううんと入り口付近から加納の呻きが聞こえた。
「良いだろう、変人も。」
秀一の問い掛けに和臣は頷くしかなかった。
奇人は総じて、権力者に楯突く。
知らない筈が無い、本庁の風雲児と呼ばれた加納がそうなのだから。
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