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歪んだ愛
第1章
―6―
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羨望する生き物である。自分より秀でた人間を尊敬し、女で云うならメイクやファッション、行動を真似る。
東条まどかは其れだったのか?
「依存性人格障害。」
和臣と菅原の紙コップに珈琲を注ぎ足す、あのヘッドホンを付けて居た研究員が言葉を足した。
「東条まどかは其の可能性が高いです。」
にっこりと、少女みたくあどけない笑顔で男は答えた。肩に掛けられた侭のヘッドホンから音漏れがする。
「依存性人格障害?」
「はい。自分に自信が無い人間が自信を付ける為、強い、や、羨望する人間の行動、言動を真似る事で、恰も自分が其の人物だと思い込む人格障害です。そうすれば、弱い自分は見えないでしょう?」
お砂糖は?と聞かれたので首を振った。
「ええと…」
「失礼、菅原です。菅原、時一(ときいつ)と申します。此処で心理分析を担当する精神科医です。」
「親子、か?」
菅原と、紹介受けた時一と言う男を交互に指し、和臣は聞いた。
「まさか。此奴は童顔なだけで、三十半ばや。」
「何時も二十代半ばに見られてしまうんですけどね…、三十六です。」
「俺より年上なのか…」
「そうなんですか?御若く見えますね。」
「俺も童顔なんだ。」
「ええ、辛いですよね。」
時一はクスクス笑い、菅原を見た。菅原は静かに椅子を引き、其処に時一を座らせた。
「僭越乍ら、同席させて頂きます。」
「何を今更謙遜を。」
「ふふ、恐縮です。さて、木島さん。依存性人格障害の事ですが。」
時一は其の愛らしい顔とは似合わない骨張った指を二本、人差し指と親指を立てて見せた。
特徴として挙げられるのが、依存性と不安感の強い行動表示、と時一は云う。
「此れは、幼少期に母親から強い疎外感を覚えた場合、発症率が高い傾向にあります。東条まどかさん、彼女は一卵性双生児で、幼少期、ゆりかさんと比べられた可能性があります。例えばゆりかさんが抜きん出た優等生で、まどかさんは一般から見て普通ですが、ゆりかさんが抜きん出ているばかりに、双子なのにと、況してや一卵性です、違う二人に母親がより優秀なゆりかさんばかり贔屓、期待した…此の場合、母親の意識はゆりかさんに向き、母親にそんな積もりは無くとも、まどかさんは疎外感を覚えます。其れが続くと、どうせ自分はゆりかに勝てない、そう思い、ゆりかさんを羨望し、ゆりかさんと同じになれば母親から必要とされる、と認識します、そして、ゆりかさん其のものになろうと、言動、行動、癖迄もコピーし、依存します。そういうの、ありませんでしたか?」
紙コップに口を付けて居た和臣は、なんでたった此れだけの事で此処迄判るんだ、とゆりかから聞いた話を時一にした。
母親がゆりかを贔屓し育てたかは判らない、何方かと云うと、母親はまどかの方を愛して居た様に思う。
まどかの真似をしたゆりかに、ほんのり笑
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