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歪んだ愛
第1章
―6―
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と云われたら仕舞う。菅原は喫煙者なのか、解析に影響が無いならと許可した。
「俺の目から見て、此の二人は一卵性だが、全く違う人物だと捉えた。俺は医学に詳しくないから判らないですが、一卵性でも性格は違うんでしょう?」
「当たり前やろ。染色体が同じでも、極端な話、生まれた時から別々の場所で引き離して育てたら、全く違う人格になるわ。ええか?人格て云うんは、育った環境で決まるんや。染色体が人格を作るんやない、環境、思考が人格を形成するんや。染色体で人格が決まるんやったら、なんで染色体の違う兄弟で人格が似たりするんや?親子で似るんや?そういう事や。世の中、一卵性やぁ云うだけで全く同じやと思う阿保もおるしやな。一卵性かて、先入観だけで見るから同じに見えるんや、ほんまは全然違う。母親や恋人が一卵性の二人を一発で見抜けるんが其れや。違うんや、染色体が同じでも、雰囲気がな。後、九割の確率で違うんが一つだけある。」
味気無い蒸気を口から出し乍ら和臣は菅原の話を黙って聞いた。
「歯型や。」
「歯型…」
「此れだけは、年齢が高くなるに連れ、かなりの確率で変わる。幼少期…詰まり乳歯期の時全く同じ歯型でも、永久歯に生え変わり、治療を繰り返す事で人格よりもはっきりとした違いが出る。一卵性の場合、一方の親知らずが抜かず、一方の親知らずが一本でも抜かれた跡があれば、此れは完全に違う人物と特定される、此れは判るやろ?虫歯の治療もそうや、全く同じ場所に出来るなんてあり得へん。歯型と治療跡、遺体との形状照合で人物を特定する。そして俺等は、歯のエナメル質迄検査する。歯肉の減り加減からもな。だから、例え一卵性でも、口の中を見れば一発や。詰まり俺が何を言いたいか。」
御前にはもう判ってるだろう?と菅原の楽しそうな垂れた目が語り掛ける。
「俺等の直感は、正しかった…」
「東条まどかは、東条ゆりか、以外居てへん。」
「やっぱり…」
「何処ですり替わったかは判らん、いや、本当に、東条まどかなんやろうけど、東条まどかが故意に東条ゆりかになっとった可能性がある。」
「済まないが、判り易く説明して頂けないだろうか。」
和臣は初めてゆりかに会った時、此奴がまどかでは無いか、と思った。思ったのは部屋。だが、疑問もあった、此の現代で一卵性だからという理由で警察が遺体の人物を間違える筈が無い。DNA検査という未知の科学捜査に繰り出した八十年代なら未だしも、こんな科学や医学が発展した現代で其れは無いと云える。
此の混乱を生じさせた答えは一つ。東条まどかが自ら“東条ゆりか”を名乗って居た事。

――まどかさんは、何時も貴女の真似をしてらっしゃいませんでした?
――そうかも、知れません…

加納とゆりかの会話が思い出された。
「そんな事って、あり得るのか…?」
人は誰しも、自分に無い人格を
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