第1章
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た。
「勿論、六年後に行われる東京オリンピック…、其の不動産です。三年後、急速に化けます。ワタクシの計算に、狂いは御座いません。」
ブリッジを押し上げ、加納は不適に笑う。
格好良く云っては居るが、計算が狂った結果、御前は一千五百万を七百万に暴落させたんじゃないのか?と、思ったが和臣は云わなかった。リーマンショックを引き起こしたのは加納では無いのだから。ワタクシが暴落させました、と云われても困るし、怖い。
「加納は、何で刑事なったんだ?」
加納程頭が切れ、素早い計算を得意とするなら、何も態々刑事等選ばなくても良い。確かに頭を使う仕事ではあるが、現場刑事は体力勝負と云って良い。元がキャリア組で、本庁でこそ加納の知能は発揮される。
「さあ、何故でしょう。」
青空に向かい加納は目を閉じた。
――御前、大丈夫か?
青空に重なる濃紺の帽子、靡く髪、加納を窺う吊り上がった目が、強い日差しの中から浮かび上がった。
――大丈夫です。
――御前、学生だろう。学校行けよ。もう直ぐ夏休みだ、気張れ。
公園のベンチで鞄を枕に寝て居た加納は、巡回中であろう警察官に声を掛けられた。
夏の、暑い日だった。
蝉の声が煩くて、然し、学校で聞く生徒達の無駄な雑談よりは静かに聞こえた。
――あのさ、サボるのは良いんだけど、不審だよ、御前。
――でしょうね、知ってます。
云って加納は身体を上げ、きちんとベンチに座ると鞄からシャボン玉を取り出し、暢気に吹いた。
――煙草、持ってたら出せ。
――失礼巡査、学校をサボる生徒皆が皆煙草を持ってると思わないで頂きたいのですが。
――真面目な不良だな。
――不良では御座いません。
――学校サボる奴が優等生とは思えない。
警察官は笑い、ベンチの横にある自販機から飲み物を買い、其れを加納に渡した。
冷たいペットボトル、一分もするとペットボトル迄も汗を掻いた。スポーツ飲料のラベルをじっと見詰める加納の頭に、じっとりとした熱さが重なる。
――熱中症、なる前に学校行けよ。
加納の頭を左右に動かした警察官は其の侭手を離し、離れた場所で遊ぶ子供の頭も同じ様に撫でた。
其の笑顔が、網膜に張り付いた。
持っていたシャボン玉を子供に渡し、公園を出た加納は其の侭素直に学校に行った。其の途中の交番で、あの警察官が、アイス食べ乍ら仕事をして居た。横にあるコンビニ、アイスを五本買った。
――はい。アクエリアスの御礼です。
差し出されたコンビニの袋に警察官は書類から顔を上げ、ゆったりと笑顔を見せた。
「加納?」
和臣の声にゆっくりと青空を視界に入れた。
「おい加納、見ろ、ジープだ。格好良い。」
「頭悪いですね、ジープ等。」
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氷菓と云われる、アイス
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