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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴487年(二) 〜
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インホフ元帥が軽く一礼した。面倒な男だ、しかし慎重ではあるな。

「では統帥本部総長は少将を引き上げる事に異論はないのだな」
「有りません」
「ならば今一度二人で相談してみては如何かな? 先ず少将の処遇を決めた後に宇宙艦隊司令長官の後任を決めるという事で」
リヒテンラーデ侯の提案にシュタインホフ元帥と顔を見合わせた。異論はないようだ、侯に“そういたします”と答えた。



帝国暦 487年 1月 10日  オーディン  ミュッケンベルガー邸  エーレンベルク元帥



応接室に入って来たミュッケンベルガー元帥が近付きながら話しかけてきた。
「難航しているのかな」
「少々難航している」
「迷惑をかけてしまったようだ」
「気にする事は無い。それより相談したい事が有る」
ソファーに座ったミュッケンベルガー元帥にリヒテンラーデ侯爵邸での話の内容を説明すると所々で頷いた。

「なるほど、ヴァレンシュタイン少将の処遇か」
「そうだ、厄介な事に少将が降級処分を受けた事で将兵達が騒いでいる」
「と言うと?」
「処分が不当だと抗議が届いているのだ。軍務省、統帥本部、そして宇宙艦隊司令部にな。抗議は日に日に増えていく。卿は屋敷に居るから知らなかっただろう」
ミュッケンベルガー元帥が溜息を吐いた、そして笑い出した。

「厄介な小僧だな、軍務尚書」
「全くだ」
今度は二人で笑った。笑い事ではないのだが笑うしかない、そんな気分だ。
「そこでだ、ヴァレンシュタイン少将の事だがあの男に国内を任せるとしてどのような地位に就ければ良いと思うか。卿の後ろ盾が無い状況でだ」
「そうだな……、地上部隊への影響力、宇宙艦隊への影響力を保持させる必要があるだろう」
ミュッケンベルガー元帥がゆっくりと考えながら答えた。

「非常時には帝都防衛司令官に任命する。憲兵隊、近衛、装甲敵弾兵は少将の指揮を受ける、地上部隊は問題無いと思う」
「問題は宇宙艦隊だな。宇宙艦隊司令長官に誰を持ってくるかで違ってくる」
「……」
ミュッケンベルガー元帥が私の顔を覗き込むように見ている。いかんな、堂々巡りだ。

「実力が有りヴァレンシュタインと親しい人物を持ってくるなら、つまりヴァレンシュタインを使いこなせる司令長官なら何処でも問題は無いな。そうでない場合は宇宙艦隊で然るべき地位に就ける必要があると思う」
「やはりそうなるか」
「うむ、但しそうなった場合は司令長官とヴァレンシュタインの関係は難しいものになる」

思わず溜息が出た。結局のところヴァレンシュタインの人事は宇宙艦隊司令長官の人事と連動せざるを得ない。どちらか一方だけを決めて済む問題ではないという事が浮き彫りになった。
「誰をヴァレンシュタインと組ませれば良いと思う?」
「……
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