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歪んだ愛
第1章
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る和臣に、駐車場の奥から笑い声が響いた。車に乗り込もうとする本郷達が、乗るのを待って迄和臣を笑って居た。
「笑うな!」
「だっせぇベンツ、連れとか思われたくねぇ。」
本郷もそう思っているのか、声は出さないが口元を一杯に歪ませる。
そんな二人の前にあるのはBMWのロードスター、二人乗りである。因みに今は、屋根が開いて居る。
「大体御前!刑事の癖になんでそんな非効率な車乗ってるんだよ!二人しか乗れないだろうが!」
「俺が何乗ろうが誰に乗ろうが、御宅には関係ぇねぇだろうが。俺のZ3馬鹿にすんなよ。クソ早ぇんだぞ。」
「覆面にするって聞かないんですよ、何とか云って下さい。」
「ロードスターで、二人しか乗れない車が覆面になる訳無いだろうが!車内聴取出来ない車なんぞ言語道断だ!」
「ぜってぇ格好良いと思うんだけど。フェアレディのパトカーがあんだから、Z3の覆面があっても良いだろうが。」
「Zパトカーは高速追跡車両だろうが!」
「御宅が前の車にケチ付けたから車検を気に変えたんだぜ、未だ文句云うか。」
井上が此の車の前に乗って居たのは、BMWのX6と云う、此れ又警察車両に向かない車だった。

――こんな馬鹿でかい車がパトランプ付けて住宅街走れると思うのか!?電柱壊す気か!?
――やって見なきゃ判んねぇだろうがよ。

実際やってみたが、和臣の考え通り小回りが利かず、ほれ見ろ、と散々云われた井上は丁度車検時期だったので買い換えたのだが、又和臣を失望させた。

――此れだから慶応男は嫌いだ…

まさかロードスターを買って来るとは思わなかった。BMWなのは文句を云わない、せめてセダンタイプにして欲しかった。逸そ次の車検でパトカーでも買わせ様か。お望みの、フェアレディZを。
「本郷の車で行けば良いだろうが!」
「嫌ですよ、俺が運転しなきゃ駄目じゃないですか。今朝洗車したのに。」
そう、本郷は、320iとまさに和臣が井上に求めた車に乗って居るのだ。此れは勿論覆面に改造してある。
「早く行こう、拓也。あの人話長いから嫌いだ。」
「ベンツでデートして来いよ、木島さん。」
「誰が…」
こんな趣味を疑われる車に乗るか、と云いたかったが、自分の車に加納は乗せたくなかった。
「ワタクシは何方でも良いです。ベンツでも、シボレーでも。」
視線の先。日中の太陽光を此れでもかと受ける和臣の車。白や黒、シルバーで埋まる駐車場で赤はかなり目立つ。此れが覆面に変わるのだから、追い掛けられる方も必死だろう。
「俺のバンブルビーには乗せん。」
「赤ではありませんか、あのカマロ。…大体、バンブルビーは黄色と黒ですよ、ですから“ビー”なのですよ。赤のオートボットはディーノで、車種はフェラーリです。」
鼻で笑った加納は助手席のドアーに手を掛けた。乗り込もう
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