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歪んだ愛
第1章
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る写真を眺める課長は云い、ギィギィと椅子を鳴らす。
一見すると大学を卒業したばかりの新米刑事に見えるが、和臣は此れでも三十二歳だ。色白の女顔で、大きな猫目と高い鼻筋、薄いアヒル唇から青年の様な声を出す。身長も一六八センチと低く、一七五センチある加納、井上と並ぶと顔半分は低い。一八〇センチを超える本郷と並ぶと、兄弟か、と課長が笑い転げる。其の課長も又、本郷以上に長身を持つ男なので、課長と和臣が並ぶと親子に見える。
冷酷に口角を吊り上げた加納は、ブリッジを触り、細長いレンズの奥から人情を感じさせない目を向けた。
和臣は、加納の此の目が嫌いだった。
目、というよりは、加納が嫌いで仕方がない。ゾッとする程端麗な顔をし、狐面を付けている風に見える。アダ名も“能面”で、本人は其れを嫌って居るが明確で判り易い為訂正はしない。新米の癖にアダ名を付けて貰えるなんて感謝されど恨まれる覚えは無い、と付けた和臣は云う。
唯の蔑称、詰まりはパワーハラスメント。
本郷と井上、見た目も性格も全く正反対なのだが、考えが同じなので其れこそ一心同体の様に動く。
抑に此の加納、経歴と肩書きが釣り合わず気味が悪い。本来なら警視庁の人間であるのに、何を思ったのかこんな小さな署で刑事なんぞする。結果主義の性格も組織官僚臭く、和臣を含む叩き上げ刑事とは違う。交番勤務等した事無いのだ。
其れがいきなり今年の六月、中途半端な時期に警視庁から来た…詰まり飛ばされて来た。
何をしたか。
組織の秩序を一番とする場所で、禁忌とされる上司への楯突きを行い、警視総監を殴り付けたのだ。飛ばされた理由を聞いた和臣達は唖然とし、殴った理由に又唖然とした。

――顔が気に食わなかったのですよ。

そんな事で一々人を殴って居ては、一体一日に何人を署に来る迄に殴って来なければならないのか、取り敢えず毎朝会う同じマンションのあの隣人、毎日不愉快にさせられるから殴らなければいけない。

――そんな理由で、キャリア捨てたのか…?

一番驚いて居たのは、キャリアに全く関心持ちそうにない井上だった。本郷は納得する様に頷く。

――あの総監、俺も嫌いだ。殴って呉れて有難う。彼奴が総監の限り、俺は試験を受けない。うっかり受かって本庁に行ったら最悪だからな。
――そうでしょう?ワタクシも嫌いです。

総監の悪口で二人はすっかり意気投合し、だったらコンビを変わって貰えないだろうかと和臣は思った。が、此の井上を相手にするのも嫌で、結局加納にした。
「御前、車の趣味悪いな。乗りたくない。」
東条まどかの自宅に向かう為駐車場に出た和臣は、加納の愛車にうんざりした。
甲冑昆虫の様に艶めくブラックボディ、逸そゴキブリに乗った方がマシだとさえ思った。
「S550、最悪…」
「あっはっは。」
乗車拒否をす
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