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少年と女神の物語
特別編
第氷話
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「ちょっと早く来すぎたな・・・家にいるわけにもいかなかったし、いいんだけど」

 そんなことをぼやきながら、俺は待ち合わせ場所である神社の鳥居にもたれかかっている。そのままイヤホンをしてテキトーに曲を聴きながら、待つ事にした。
 ヒルコ戦ではみんなに助けてもらったので、そのお礼として何でも言うことを聞くと言って・・・今日は、そのうちの一つでここに二人で来る、ということになっている。本人の希望で待ち合わせということになったし、準備したいこともあるだろうから結構早めに来たわけだ。
 その準備の段階をあまり見られたくないということは、長年女性多数の中で暮らしてきたから理解している。その辺りの感覚は妙に鋭くなったなぁ・・・

「そういえば、ここは何の神様が祀られてるんだろ?」
「いや、天満宮ってあるんだから菅原道真でしょ・・・」

 大分たってからふと思ったことを口に出したら、呆れたような声がすぐ隣から聞こえてきた。
 そちらを見ると、そこには浴衣を着た氷柱がいる。水色を基調として、花の模様が入っている。

「早かったな、氷柱。まだ待ち合わせまで時間はあるぞ?」
「私より早かった兄貴がそれ言う?兄貴が早くに出てったから、こっちも早めたのよ」
「気にしないでゆっくり準備しててよかったのに。俺が早くに出たの、準備見られたくないだろうなぁ、ってのが理由なんだぞ?」
「その気づかいはうれしいけど、待たせるのも悪いじゃない。いくら家族相手だったり、相手が気遣ってくれたんだとしても」

 まあ、確かにその通りだ。そう思ってこれ以上言うのはやめて、イヤホンをしまう。
 そのまま鳥居から背を離して、神社の境内で行われているお祭りを指差す。

「んじゃ、行くか」
「そうね。結構混んでるけど・・・」
「仕方ないだろ、でかい祭りなんだから」

 そう、氷柱は一緒にお祭りに行く、というのを希望として出した。それで近い時期にやってるそこそこ大きいお祭りを探してここに来たのだ。家からもそう遠くなかったし、ちょうどよかった。

「とりあえず、はぐれないように手でもつなぐか?」
「えっ・・・|《そんなデートみたいなこと・・・》」
「一応、これってデートなんじゃなかったのか・・・?」

 俺がそう言った瞬間、氷柱の顔が真っ赤になった。ちょっと面白い。

「何で普段は聞こえてない癖に、今日は聞こえてるのよ!」
「え、そこ怒られるの・・・?」
「兄貴が普段から聞こえないみたいにしてるから、口に出しちゃうようになったのに・・・」

 つまり、わりと頻繁にこう呟いてるわけか。初めて知ったなぁ、とか考えてたら氷柱の手が俺の手の中に滑り込んできた。
 赤くなった顔を俯かせてるのは、何も聞くな、という事なのでそのまま歩きだす。
 しばらく
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