第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
10話 出立の兆し
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段を講じなければ、あるいは他の遭遇者と同じ末路を辿ることだろう。万全でなくとも、少しくらいは考えておきたい。
……と、思考を巡らせてみると、アルゴは不敵な笑みを浮かべていた。まるで我に策在りと言わんばかりだ。
「その前に、オイラをPTに入れてくれないカ?」
「付いて来るのか?」
「まーナ。そうでもしないと逃げられるだろうサ」
まさか、AGI極振りの速力を以て捕縛するつもりなのだろうか。
いや、この鼠がそんな短絡的な手段で策を練った気になるわけがない。おそらく、エルフを術中に嵌める策略を秘めているに違いない。そう、何しろ彼女は五分の雑談で百コルのネタを抜く鼠だ。汚いやり口においては信頼していいだろう。逡巡の末、アルゴをPTに招待する。間もなく、PTメンバーに【Argo】というプレイヤーネームと対応するHPバーが出現する。
「さて、あとは作戦発表だケド………ちょっと聞いてもいいかナ?」
「なんだ?」
「この【Slade】って、まさカ……え、じゃあ今までのって実名………」
「文句あるか?」
「………んにゃ、ナ、何もないヨ!? 意外って思っただけダ! それだけだかラ!!?」
アルゴのいやらしい笑みはなく、取り乱したような返しで会話が途切れる。
何が意外だったのかは敢えて触れないでおくことにする。そういえば、俺のプレイヤーネームはアルゴからすれば初見だったか。自己紹介の機会をヒヨリのインターセプトでふいにされ、それ以来ずっとアルゴからは《リンちゃん》で通っている。もう如何とも仕難い現状のやるせなさを愛用の湯呑に注がれた茶で流し込むと、アルゴも話を進展させるべくポップアップメニューからマップ画面を開き、四ヶ所の地点を指差して示す。
初めに示されたのは二層〜三層往還階段から西へ少し行った地点、次に《ズムフト》近辺を二ヵ所、最後に再び往還階段から西の地点を示す。アルゴ曰く、遭遇した日時の順に指差したとのことらしい。
「まず、確認してもらったエルフの出現が確認されたポイントはこれだけだナ。プロの目には何か映ったカ?」
「これだけで判断出来たら苦労はないだろ。エルフの基本的な出現位置から大きくずれてるのは気に掛かるけど、現場を見ないことには何も言えない………あと、俺はそんな得体の知れないプロになった覚えはない」
出現地点はある程度絞れているが、たった四回だけの報告を鵜呑みにするのは早計であろう。出現地点にヒントになり得る物品が転がっていれば理想なのだが、そればかりは運が絡んでくる。そのアイテムが発見できるか否かというよりは、設置されているか否かという根本的な問題だ。無ければ地道な正攻法で探っていくしかなくなってしまう。そうなれば、捜索範囲は広大だ。いざとなれば諦める事も視野
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