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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
10話 出立の兆し
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ンクエスト冒頭の二人のエルフはある種でユニークなレアモンスターかも知れないが、あれは所謂負けイベントというもので、敵対したエルフを撃破するというのは絶望的に困難であろう。


「具体的に、どんなヤツだ?」
「どうも、そのレアエルフがプレイヤーを認識した途端に逃亡するらしいゾ。辛うじて視認できたプレイヤーの情報で黒エルフって事までは掴んだケド、これだけじゃ情報が少なすぎル。そこで、リンちゃん達に捜索を依頼しようと思ったのサ」


 この口振りだと、遭遇者は複数人いるのか。アルゴだって既に情報収集をしているだろうし、流言が勝手に歩き回ったとも、不特定多数が口裏を合わせているとも考えにくい。存在の有無はさておき、こうしてアルゴが口に出した以上は、情報として一定の信頼度はあるのだろう。


「……話は分かったってことにしとく。で、どんな手筈で行く?」


 しかし、そのエルフの捜索に繰り出そうにも、いくつかの問題や《落としどころ》について考えなければならないだろう。

 例えば、そのエルフについてどこまで調査するのかという《妥協点》だ。出現ポイントまでか、あるいは逃走ルートか、さらに踏み込んで使用スキルや装備まで調べ上げるか、果てはドロップ品まで確認するか、といった具合である。これを定めておかなければ捜索の方向性がブレてしまう事にもなりかねないし、或いは踏み込み過ぎて情報の商品価値が損なわれてしまうことだって考えられるだろう。ドロップ品を確認するために倒したはいいが、再湧出(リポップ)しませんでしたともなれば、依頼したアルゴからすれば徒労となる。ドロップにありつけなければ、俺達だって働き損だ。
 そして、最大の難問は手段だろう。そもそも《迷い霧の森》は、その名が示す通りマップがかなり見づらいばかりか、時折濃霧が立ち込める。まさに名は体を表すといった具合のエリアなのだが、そんな劣悪な場所で無策に鬼ごっこなんぞすれば、煙に巻かれそうなものだ。殊に気を付けなければならないのは、風景に同化した植物型モンスター《トレント・サプリング》だろう。彼等はただ生えている状態だとプレイヤーの《索敵》スキルに反応しないのだ。それこそ、ただの枯れ木に見紛う造形であるだけに、端から見れば中々擬態に気付かず、そのくせ彼等の索敵範囲に一歩でも踏み込もうものならば左右の根を地面から引き抜いて猛然とダッシュしてくる。しかし、エルフや狼型のモンスターが彼等の索敵範囲に踏み込んでも一切反応しないのだ。当然と言えば当然なのだが、しかしこれは即ちプレイヤー側にのみ作動する《設置型迎撃装置》とも考えられる。つまり、見通しの悪い森の中、トレントの妨害を乗り越えながら、エルフの情報を探らねばならないという困難極まる任務となるのだ。

 かなり難易度は高いはずだ。何かしらの手
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