第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
10話 出立の兆し
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倒した際にガラス片になって爆散するのではなく、
『お主ら、斯様な無礼を働いてタダで済むと思うでないぞ! お爺様に言い付けるからな!?』
………と盛大な捨て台詞を残す謎モーションの後に奥の扉――――あとで調べたら固く閉ざされていた――――から大泣きしながら逃げていくのである。ある意味新鮮だった。イオ姫の言う《お爺様》が何なのかは知らないが、とくに何もないなら忘れてしまおう。
しかし、万事が上手くいくわけではなく、イオ姫撃破後に少しレベリングも兼ねて隠しクエストを幾つか消化していると第二層ボスも攻略され、《ウルバス》に戻った時には第三層の転移門が有効化されていたのには驚かされたものだ。第一層の攻略に要した時間から鑑みても、相当な短縮が為されたのが見て取れる。第一層の時点では恐怖で停滞していた攻略ペースも、戦闘に慣れてきたことで速まったのだろうか。もしくは攻略可能であると知って強気になれたのか。どちらにせよ、いい流れだと思う。もっとも、俺達自身は攻略会議及び攻略レイドへの参加はあまり重要視していないので、参加できなかったという点に関して言えば大した問題ではない。
「で、お二人はこれからどうするんダ?」
アルゴの言う《どうする》とは、今日の予定というよりは第三層における行動指針だろうが、この手の質問は意外なことに初めてだった。というのも、これまでは互いの領分に踏み込まないように、会話であってもある程度触れていい部分と、そうでない部分が薄ぼんやりと線引きされていた。今後の予定というのは、その中では後者に分類されるものだ。
アルゴからすれば情報の仕入先が露見する可能性が生じるだろうし、俺からすれば秘匿事項たる隠しダンジョンの位置の露見に繋がる。こういった直接的な質問というのは、情報を扱う者同士が互いに対等であるために必要なものだ。第一層のボス攻略前日での一件に至っては、かつて俺が《セティスの祠》を独力で踏破したことについて知っていたベータテスターがいたという極めて低確率な不確定事項によるものだ。おまけに情報屋としての仕事まで絡んでいただけでなく、あのような雰囲気に当てられてはシラを切り通せない。あれは仕方なかった。俺は悪くない。
………と、これまで例のない切り口に眉根を寄せつつ黙考する。なにせ相手はあの鼠、どんな言葉尻を捕らえて追及されるのか分かったものではない。どう返すか考えていると、リスか何かのように一心不乱に菓子を食べていたヒヨリが口火を切った。
「これからね、お買い物に行くんだよ!」
……うん、今日も相棒は複雑な事情とは無縁らしい。平和でなによりだ。
「……お、お買いモノ?」
「うん! 料理が出来るようになったから、練習するの!」
余談だが、先日ヒヨリが《料
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