三十一話:俺の願いは一つ
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あれからみんなで黒歌の話を聞いた。その内容は黒歌が何故、前の主を殺したのかだ。聞いて分かった事は無実とは言わないでも十分減刑が望める内容だったことだ。妹である小猫を守るために主を殺したというのを聞いたとき思わず兄さんの事を思い出した。兄さんも俺のためなら何でもするからな……ずっと俺のために傷ついていたよな。
俺の知らないところで身も心も削ってさ……。だから、黒歌と小猫には別れて欲しくない。
姉妹なんだから、家族なんだからずっと一緒に居ないとダメだよな。その為に俺に出来ることはしていくつもりだ。だからこそ、俺達は今ある人と会っているんだ。誰かって?
それは―――
「話は聞かせてもらったよ。ルドガー君」
「わざわざ足を運んで下さってありがとうございます。サーゼクス様、グレイフィアさん」
俺は立ち上がってサーゼクス様とグレイフィアさんにお辞儀をする。隣で役目を取られた部長が少し不貞腐れているけど気にしない。エゴだけど、この話に関しては俺が話したい。
俺の大切な人に関わることだからな。……俺が黒歌の願いを叶えてあげたい。
また、姉妹で幸せに暮らさせてあげたい。……俺達、兄弟みたいに手遅れになる前に。
「さて、早速話に入ろうか。黒歌君の件に関しては相手側にも非があるのは間違いないだろう。
こちらでも黒歌君の元主について調べてみたが幾つかの不正の証拠も見つかった」
俺は黙ってサーゼクス様の話を聞く。今のところはこっちに有利に運びそうな内容だけど……まだ安心は出来ない。政治っていうのは善悪だけで成り立っている訳じゃないからな。
見栄や体裁を整えたりしないといけないし、悪だとわかっていても切り離せない人物だっている。
綺麗事ばかりではやっていけない。サーゼクス様はまだ甘い方だろうけど、ビズリーみたいな全体の為に一を犠牲にすることを戸惑わない奴だっている。……多分、ビズリーの方が俺よりも正しいことをしていたんだろうな。あいつは使命の為に自分の願いは後回しにしていたわけだし……クルスニク一族の中でもかなり異質な奴だよ。そう自己完結をしてサーゼクス様の方に意識を集中させる。
「さて……始めにルドガー君に聞いておきたい。もし黒歌君の指名手配が解かれない場合、君はどうする?」
そう聞かれて俺はチラリと黒歌の方を振り返る。少し不安げな目をした黒歌が俺を見つめ返して来る。俺は彼女に安心させるように優しく笑いかけ手招きする。そんな俺に若干戸惑いながらも黒歌が俺の隣に来てくれる。本来ならあんまり自由に動いたらいけない身だけど他のみんなも空気を読んでか何も言わないでくれる。俺は黒歌が並んだのを確認してからサーゼクス様の方に向き直る。
「今、有るもの全てを捨てて、黒歌と一緒に逃亡します」
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