三十一話:俺の願いは一つ
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見てくる黒歌が余りにも可愛いので気づかないふりをして歌い続ける。しばらくして歌い終わると流石に何か喋った方が良いと思ったのか黒歌が話しかけて来る。
「ねえ、ルドガー。いつも歌っている、その歌って何の歌にゃ?」
「我が家に伝わる古い歌で、会いたくて仕方のない相手への想いが込められた『証の歌』って言うんだ」
「ふーん、何だか恋歌みたいにゃ」
「そうだな……」
恋歌か……実際の所はそんな感じだよな。歌声の巫女と呼ばれた始祖クルスニクがマクスウェルを召喚するさいに使った歌で会いたいという想いが込められたものだ。まあ、歌詞自体は髭を引っこ抜くとかの童歌みたいなものらしいけどな。それでも……マクスウェルにとっても始祖クルスニクにとっても大切な歌なんだよな。……きっと始祖クルスニクはマクスウェルと別れた後もずっとこの歌を歌い続けていたんだろうな。本当に大切な歌だ。
もちろん俺にとってもだけどな。兄さんから受け継いで最後にエルに託したからな。
エル……俺の歌ちゃんと覚えてくれているかな? まあ、エルなら心配いらないか。
なんたって、俺の『アイボー』だからな。
「それで、ルドガーは誰を想って歌っていたのかにゃ?」
「君、以外に誰がいるんだ?」
「にゃっ!? ……うう、ナチュラルに口説いてくるのは卑怯にゃ」
黒歌が何やら面白そうに質問してきたので、真顔で返してやると顔を真っ赤にして俯いてしまった。だが、嬉しそうに耳がピコピコと動いているので全く顔を隠している意味がない。この姿、永久保存できないだろうか? 今すぐにでも携帯のカメラで撮影するべきか?
でも、それだとこの姿が俺以外の誰かに見られる可能性が出てくるのか……仕方ない。
ここは涙を飲んで撮影しないことにしよう。それに……今は伝えたいことがあるしな。
「なあ、黒歌。俺、君に伝えたいことがあるって言ったよな。……今さらかもしれないけど伝えさせて欲しいんだ」
「え…う、うん。わかったにゃ」
俺は顔を上げた黒歌の目を真っ直ぐに見つめる。黒歌はそれに対して恥ずかしそうに目を逸らそうとするが俺はそれを止めさせて目を見る様に促す。……約束は目を見て行うものだからな。エルから教わった大切な約束の結び方を思い出しながら俺は深呼吸をして口を開く。
「君に尽くしたい、君が望む全てを叶えることを約束するよ。
君を守りたい、君を傷つけるもの全てを撃ち滅ぼすことを約束するよ
君を支えたい、苦しんでいるときも悩んでいるときも傍に居続けることを約束するよ。
君を愛したい、この血肉も、意思も、魂の一欠片に至る全てを使って愛すことを約束するよ。
だから―――俺の“生きる意味”になってくれないか?」
それだけ
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