三十一話:俺の願いは一つ
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泣きつきたかった。
でも……俺にはそんなこと出来ないよな。俺が殺したんだから……。そこまで考えて思考をもとに戻す、今は黒歌のことが先だ。完全な無罪じゃないってことは何かしらの罰はあるってことだ。
そう考えてサーゼクス様を見ると案の定、意味ありげに頷いてきた。
「正し、黒歌君にはしばらくの間、監視がつくことなる。黒歌君に危険性がないと証明するためには必要なことなんだ、分かってくれ」
そう言って頭を下げるサーゼクス様。
まあ……サーゼクス様にとっても結構苦渋の決断だったんだろうな。
俺もこれ以上高望みはしない。黒歌も納得するだろ。
「……分かったにゃ。それで自由になれるなら我慢するにゃ」
「ありがとう。それでは―――ルドガー君は黒歌君の監視を頼むよ」
「…………は?」
サーゼクス様に言われた意味が分からず変な顔をして掠れた声を出してしまう。
俺が黒歌の監視……どういうことだ? サーゼクス様の言っている意味が分からずに説明を求めるように見つめると何やら、してやったりといった感じの顔で笑われた。
グレイフィアさんが何やら隣でため息をついているのが印象的だ。
「監視者は私自ら選んでね。君、以上の適任はいないと思うのだがね」
「……俺でいいんですか?」
「君はルシファーが後見人の人間だ。さらに監視場所はそのルシファーの用意した君の家だ。
これ以上信頼出来て監視しやすい条件もないだろう?」
そう言ってさらに笑うサーゼクス様。そんなサーゼクス様の顔を見て俺も笑いがこぼれる。
俺が監視する以上は監視なんて言葉はお飾りに過ぎない。黒歌は特に不自由もなく暮らせる。なんだ……無罪も同然の扱いじゃないか。そう思って黒歌の方を見るとあっちも、そう思っていたらしく笑いながらこっちを見て来る。そしてお互いに笑い合う。さてと……これで全部終わったんだ、だから―――
「帰ろうか、黒歌。俺達の家に」
「うん……」
二階のベランダから月を眺めながら証の歌を口ずさむ。これからはごくありふれた幸せな日常が戻って来るのかと思うと胸が弾む。ミラ、俺はやっと幸せを掴めそうだよ。
でも……その前にはっきりさせておきたいことがあるよな。
「こんな所で何しているのにゃ? ルドガー」
「ん、月が綺麗だなって思ってな」
俺がそう言うと何故か顔を赤らめる黒歌。あれ、俺なんか変なこと言ったかな?
うーん……まあ、分からないけどいいか。黒歌の可愛い顔が見れたと思えば何も問題ないよな。
俺は黒歌が隣に来れるように少し横に移動して場所を譲る。そして、また月を眺めながら証の歌を口ずさみ始める。
そんな俺の横に並んで顔を赤らめてチラチラと横目でこちらを
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