三十一話:俺の願いは一つ
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「ルドガー……」
俺は黒歌の手をギュッと握りながら宣言する。そんな俺を黒歌が顔を赤らめながら見てくる。そんな黒歌が堪らなく可愛くて直ぐにでも抱きしめたい衝動にかられるがそこをグッと我慢してサーゼクス様の反応を見る。サーゼクス様は俺の方を爽やかな笑顔を浮かべながら見ているが、その目は俺を見定めるように鋭いものになっている。
「もし、私達がそれを止めようとしたら?」
「邪魔するものは全て壊します」
そう言うと、一気に空気が冷たくなり、睨み合うように見つめ合う俺とサーゼクス様。
サーゼクス様の雰囲気は普段の柔らかな物とはうってかわり魔王と呼ぶにふさわしい威圧感を放っている。
その様子に目の前にいる黒歌だけでなく後ろにいる部長達も震えている。
この場で威圧されていないのは俺とグレイフィアさんだけだ。
正直言って俺も怖いと思うぐらいだけどな……でも、引く気はない。
「私達を殺すのもいとわないと?」
「……それしか黒歌を守る方法が無いのなら、後悔はしない」
そう言うと、隣の黒歌に心配そうな目で見つめられる。
俺の事を心配してくれているのかもしれないけどそんなに心配することは無い。
守るためにそれしか方法が無いのであれば俺は迷わずその方法を選ぶ。
……みんなだって出来れば失いたくない。
でも……何に代えてでも守らないといけないんだ。
決して失ってはいけない者の為に全てを捨てる覚悟なんてとうの昔に出来ている。
「世界を敵に回してでもかね?」
「黒歌を守る為なら―――世界も絆も幾らだって壊してみせる」
俺の目からドロリとした黒いものが溢れてくるように感じられる。
黒歌が俺の生きる意味だから……俺の全てだから。
黒歌が笑っていてくれさえすれば、俺は他には何もいらない。
「そうかい……そこまでの覚悟なのだね。なら―――何も心配はいらないようだね」
そう言ってフッと微笑みかけてくるサーゼクス様に思わず呆気にとられる。
今の流れだと悪い知らせがあるのかと思っていたからな。
俺は体から力が抜けていくのを感じる。なんだかんだ言って力が入っていたんだな、俺も。
そんな俺にサーゼクス様が詳しく説明をしてくる。
「完全な無罪とは言わないでも、十分に情緒酌量の余地はあると判断してね。黒歌君のはぐれ悪魔としての指名手配は取り外させてもらった」
そう言うサーゼクス様に黒歌だけでなく小猫やみんなも嬉しそうな顔を浮かべる。みんな黒歌の事情を聞いたときは黒歌への理不尽な仕打ちに怒っていたからな。小猫は真実を知って、泣いて黒歌に抱きついていたし……ちょっと羨ましかったな、俺だってずっと守ってくれていた兄さんにああして抱きつきたかった…
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