28:蛇の贈り物
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「デイドさん、なにしてるの?」
安全地帯から離れ過ぎず、かつデイドも監視できる距離での見回りが終わり、再び焚き火の前に腰を下ろした時のことだった。
戻ってきた時にはデイドは縛っていたクセのある長髪を降ろし、手に乳鉢と乳棒を持って何かを擦り混ぜており、焚き火の上には脚台が設置され、その上では丸底フラスコの中でコバルトブルーの液体が沸騰していた。よく見ると、中には何なのかよく分からない謎の顆粒状の固形物も入っている。
「見るのは初めてか、閃光? 見ての通り、薬の調合だ」
そう言う反対側に腰掛けているデイドの傍らには、試験管やシリンダーなどの実験器具や様々な素材も転がっていた。
「アスナでいいわよ。……ふーむ、料理よりもまだ複雑そうな手順だね。料理は現実と比べて随分簡略化されてるから羨ましいなぁ」
「慣れればそうでもねーよ。オレももっと緻密な調合でもっと複雑な効能の薬を作ってみたいんだが……ま、その点は隣の芝生は青く見えるってヤツだろーな」
そう言いながらデイドはフラスコを取り上げ、中の青の液体をビーカーに移し、乳鉢の中の粉末をその中に入れてガラス棒で慎重にかき混ぜている。すると不思議な事に、色が徐々に薄まっていき、透き通る空色へと変化した。
「……あの、デイドさん。デイドさんは何で、ユニコーンを狙っているの?」
「あ? ンだよ、藪から棒だな……」
今度は試験管と幾つかの小さな瓶を取り出し、スポイトで数滴ずつ慎重に試験管の中に薬品を注いでいた。
「いえ、デイドさんはあたし達以外の三人の中でも、一番レベルが高いソロだし、わざわざ誰もが狙うユニコーンを狙わなくても、ここより上の層の人が少ない場所でモブをじっくり狩っていったほうが着実で実りもあるかなーって思って……」
「ハッ、無理すんな。オレに探りを入れたいってのが、顔に書いてあるぜ」
「……バレましたか」
デイドは軽く失笑、わたしも軽く苦笑を漏らした。
「……ま、いいぜ。オレは死神なんかじゃねーしな。隠す事でもねぇ」
試験管に栓をして軽く振り、鮮やかな緑色になった中の液体を眺めながら、デイドは話し始めた。
「――オレはよ……テメーみてーになりてーんだ」
「え?」
首を傾げると、デイドは勘違いをするな、と言いたいばかりにわたしを軽く睨んだ。
「オレは早く有力ギルドに入って《攻略組》になりてぇって言ってんだ。その為には、ここでユニコーンを狩るのが一番手っ取り早い」
試験管立てにそのガラス管を置き、ビーカーの空色の液体と見比べながらデイドは言う。
「今、最前線の攻略に携わる大手ギルドの入団に必要な最低ラインは、ほとんどがレベル80以上だ。オレのレベルは79。……
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