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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
28:蛇の贈り物
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オレはユニコーンを倒し、その莫大な経験値で一気にレベルアップする。さらに討伐した暁に得た名声は、オレの実力を示す一端になってくれるだろーからな。入団面接の際に、有利な材料になってくれるだろーさ」

「でも、なんでそんなに急ぐ必要が……」

「……フン。急ぐ、か」

 わたしの言葉に、デイドは顔を苦渋に(しか)めた。ただでさえ厳つい顔立ちに、深い皺が刻まれる。

「オレはな、このクソみてぇなデスゲームが始まってからは、特に抜きんでてレベルが高いわけでもない中層ゾーンの一人だった。高効率な狩り場やレアアイテムの情報も得られず、ただ一人でバカみてーに泥だらけになりながら、ひたすらに雑魚モブを狩ってレベルを下積みしている毎日を送ってきたんだ。……言ってみればオレは、優秀なテメーらとは違う、地道な努力だけでなんとか上の下ぐらいにまでのし上がれた、凡才ソロプレイヤーなんだよ」

 たしかに彼の装備は、槍こそ中々にレアだが、他の身に纏う軽鎧などはレベルの割りに地味でポピュラーなものだった。

「……だが、それも限界だ。ソロはもう……疲れた。このレベルにもなると、たった1上げるのに、オレだと一週間は掛かっちまう。オレの見立てだと、その間に攻略組の入団最低ラインはまた上がるだろうよ。今も刻一刻と迷宮区とボスは攻略され、最前線の数字は上がってるんだからな。……オレが攻略組になりえるのは、これが最後のチャンスなんだよ」

「なんで、そこまでして攻略組に……?」

「……………」

 恐る恐る問うと、しばしの沈黙が返ってくる。
 デイドは黙ったまま手に取った試験管の栓を開け、フラスコの中へと注ぎガラス棒でかき混ぜた。すると色が一気に乳白色に変化した。そしてもう一つ空のビーカーを取り出し、その上にろ紙を敷いてから乳白色の液体を注ぎ、ろ過し始めた。不純物を取り除かれて純白になった液体が、重力に従って徐々にビーカーの底へと溜まっていく。

「……さっき、オレはテメーやキリトと違うって言ったが……ある意味では、テメーらと同じでもあるんだぜ?」

「どういうこと?」

「なに、難しい事じゃないぜ。答えは簡単だ」

 デイドは一度、垂れる前髪をかきあげ……

「――オレもテメーらも……骨の髄まで、ネトゲ中毒のMMOプレイヤーってだけなんだよ」

 流れていく液体を眺めながら、フッと自嘲的に笑った。

「命懸けこそではあるがな、結局オレもこの世界で……高レベルになって、レア武器を手に取って、最前線に立って、頼もしいヤツらと共に、アホみたいに強ェボスに挑んでみてぇ……そんだけのこった。その為なら、オレは……」

「……デイドさん?」

 ふと、デイドが再び黙り込む。わたしが声をかけると、顔を上げた。

「……そういや
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