憎悪との対峙
39 危険な違和感
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肉体へのダメージを鑑みて休息に徹するのではなく、それでも無茶をしてしまう類の人間だった。
それも表情に疲労や痛みが出ないから尚の事面倒なタイプだ。
ジャックは不安を抑え、自分の姉を心配しつつも信頼する。
今までも何度も無茶をしても最後はちゃんと生きて帰ってきた。
今回もそうだと信じて。
アイリスはキッチンでコーヒーを淹れていた。
正直なところ豆の量を含むコーヒーの淹れ方という知識はほぼ皆無だった。
粉状にしたものにお湯を入れる、その程度だ。
それにコピーロイドで実体化している以上、普通の人間のように味覚は無い。
結果、なんとか見た目はそれに近いものが完成した。
それを持って本棚の裏のエレベーターに乗って地下ガレージへと降りる。
しかしその間も自分の作った湯気を発する黒い液体を睨むように見ていた。
「ハートレス」
「2人の様子は?」
ガレージの中央の大量のPCでジョーカープログラムの修復を含めたあらゆる作業をこなすハートレスはアイリスが入ってきたのに気付いた。
「大丈夫、2人共眠ってるわ。でも…」
「シンクロナイザーの方は相変わらずの回復力?」
「それだけじゃないの。メリーさんも…サイトくん程じゃないけど」
「…そう」
「驚いてないの?」
「今更あの子が何をやってのけようと驚かないわよ」
ハートレスはいつものように表情1つ変えずにため息をついてみせた。
確かに彩斗が回復するというのは予想の範疇だ。
しかしメリーまでもがというのは予想外、驚きを抑えるので必死だった。
アイリスと顔を合わせること無く、コーヒーを手に取って口元に運んだ。
「!?うっ…」
ハートレスの顔が一瞬だが歪んだ。
思わず口に含んだコーヒーを吹き出し、「マズイ」と叫びそうだった。
しかし何とか堪えてテーブルの上に戻す。
「…美味しくなかった?」
「豆が泣いてるわ」
「ごめんなさい…私」
「別にいいわ。豆の量と湯の温度はあからさまに間違えてるけど、使うものは間違えて無いみたいだし」
ハートレスは力の抜けた目でアイリスにウインクすると、イスの背もたれに体重を掛けた。
大量のモニターに出力される作業の進行状況を横目に3つのメインモニターを見ている。
PCには彩斗のトランサーの繋がれ、何かを分析しているようだった。
「何これ?」
「今回のあの子の戦闘の様子。トランサーに録画用アプリを仕込んでおいたの」
「…そんなことしてたの?」
「ええ。電波人間の戦闘能力、そしてあの子の見ているものが知りたくてね」
「それが…これ?」
中央右のThunderbolt Displayには見たことのな
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