憎悪との対峙
39 危険な違和感
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を防ぐというものだ。
ジョーカープログラムのような特殊なプログラムに頼ること無く、単独のシステムで電波人間共通の脅威を無効化、それどころかそれを武器として使用する。
この弾丸で撃たれれば、瞬く間に全身にノイズが駆け巡り、全身が電波体としての肉体に拒否反応を起こして自己消滅する。
電波人間といってもベースとなるのは人間の肉体だ。
変身した状態で受けた弾丸のダメージは生身の肉体に内出血やアポトーシスといった形で現れる。
それも通常ならば徐々に蓄積されるはずのものが一瞬で、それも人為的に対象を選んで放たれるのだ。
まさに電波体にとっては普通のクリムゾンを上回る脅威としか言い様がない。
「だけどよ…気づいたか?これだけコテンパンにしておいて…アイツ、最後の最後で手を抜いたんだ」
「ええ…その気になれば殺せた。最初は全力で潰しに来ていた。でも急所は外した」
2人は戦闘時には気づけなかったことについて考えていた。
戦闘中は本当に殺されると思っていたが、実際のところは生きている。
最初は装備のスペックをフルに引き出して攻撃を仕掛けてきたが、トドメの一撃だけは急所を外した。
クインティアには心臓と肺へのダメージを回避しつつ戦闘不能に追い込み、ジャックにはすぐに体の異常に気づき、自ら電波変換を解除するような場所に弾丸を撃ち込んだ。
もし足の目立たないところに撃ち込まれていれば、知らないうちにじわじわとクリムゾンの毒が回り、気づいた頃には命を落としていた。
「随分と舐められたもんだぜ」
「…でもある意味、手加減するくらいの思考回路と良心は残ってたってことよ」
クインティアは表情こそ変えていないが、少し安心したことがジャックには伝わっていた。
しかしそれと同時に不安に思っていることも理解できていた。
「じゃあそれが無くなったら…?」
「…考えたくもないわ」
そう呟くと、クインティアは上着を着こみ、コップの水を飲み干す。
もしジャックの言うとおりになってしまえば、それは既に怪物としか言えない。
圧倒的な力はそれを正しく使うだけの思考回路が無ければならないのだ。
「殺人マシーン」、そんな単語が頭に浮かんでは首を振って打ち消す。
ゆっくりとテーブルまで歩き、置かれているメモに目を通してドアの方へ向かった。
「どうした?」
「送電所と幾つかのディーラー管轄の施設がValkyrieと思われる連中に占領されているらしいわ」
「!?ヤロォ…!」
「あなたはもう少し休みなさい」
「姉ちゃんは!?」
クインティアはジャックの制止を聞かずにドアを開けて出て行った。
ジャックの想像よりもクインティアのダメージは軽い。
しかし戦闘ともなれば支障が出るだろう。
クインティアは合理主義者のように見えて全く違う。
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