第三十七話 川の中での戦いその七
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「腹も顎もな」
「どっちも急所だからな」
生物ならばだ、このことは絶対のことだ。
「狙ったんだよ」
「そういうことだな」
「けれど今の一撃でもだよな」
「そうだ、わしは倒せない」
まだだ、そこまでは及ばないというのだ。
「残念だな」
「いや、残念じゃないさ」
薊の返事はさばさばしたものだ。
「わかってるからな」
「それでか」
「そうさ、まだだよ」
薊にしても、というのだ。
「まだあんたへの最後の一撃はな」
「そうか、ではどうする」
「それはこれから見せるさ」
怪人と摺り足で間合いを離してだ、棒を両手に持ちなおしつつ言った。
「あんたにな」
「戦いの中でか」
「その通りだよ、じゃあいいな」
「面白い、では見せてみるのだ」
怪人も薊のその言葉に乗ってみせた、そこには好奇心もあっただろうか。
「わしにな」
「ああ、じゃあな」
「そしてわしは待つことはしない」
薊が出すその最後の一撃を、というのだ。
「待つ位ならな」
「仕掛けて来るよな」
「倒させてもらう」
その一撃を見ること以上にだ、このことに興味があるのだった。
「これからな」
「そうか、来るんだな」
「では行くぞ」
怪人はこう言ってだ、そのうえで。
その巨体を熊の、巨体とは思えないスピードで突進させた。そうして。
体当たりを浴びせんとする、だが。
ここでだ、薊はその身体を一旦右にやった。それで体当たりをかわすと共に。
棒を怪人の腹に巻きつけた、そこから炎を出して。
怪人をそれで焼いた、巻き付いた棒は怪人を巻止めてからすぐに怪人の前への突進によって引っ張られ薊の手から離れたが。
薊はそれを引き止めようとしなかった、あっさりと手放したがそこにだ。
今己が出せる炎の全てを注ぎ込んだ、そうして怪人をその炎で焼いたのだった。
菫は霧を出した、そして。
その霧の中でだ、怪人に問うた。
「これで終わりと思っていないわね」
「そんな筈がないな」
「そうよ、むしろね」
「これからだな」
「ええ、こうしてね」
霧でだ、怪人の目をくらましてだった。
「貴方の目をくらまし」
「そしてさらにだな」
「仕掛けさせてもらうわ」
「これは最初か」
「あくまでね」
「成程な。だが」
ここでだ、怪人は言うのだった。
「狼は元々目はあまりよくない」
「そうね、犬もそうよね」
「犬は狼の弟だ」
狼を家畜としたのが犬だ、それで怪人はこう言ったのだ。
「それならばわかるな」
「目は悪くとも」
「他の感覚は優れているのだ」
「耳、それに特に」
「鼻だ」
この器官がとりわけ、というのだ。
「狼の鼻を甘く見るな」
「こうした幻でもなのね」
「全く意味がない」
狼の鼻の前
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