三十話:何よりも大切な―――
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ななきゃ絶対に助からないんだ。
最後だからこそ、笑って別れたい。エルの時もそうだったからな。
俺は最後にもう一度だけ黒歌を―――愛しい人の顔を見て笑いかける。
「だめ…そんなのだめにゃ! ルドガー!」
「……姉様。……ルドガー先輩…っ!」
「黒歌……目を閉じていろ。みんなもだ」
ダメだという黒歌とどちらかを選ばなくてはいけないのかと絶望した表情で俺達を交互に見つめる小猫とみんなにそう言う。何も嫌な光景を見せる必要もないからな。
兄さん、ミラ、悪いけどもう少しでそっちに行くよ。
特にミラはごめん、君と約束したのにもう生きられなくなりそうだ。でも……俺はこの人生に後悔なんてない。俺はグッと刃を首筋に押し当てる。冷たい金属の感触が伝わって来るが不思議と恐怖はない。そこで俺は最後の一言を言うために口を開く。
「勝手な男でごめん。でも、最後にこれだけは言わせて欲しいんだ。……愛しているよ、黒歌」
「だめえええええっっ!!」
最後にそう告げて俺は刃を―――
「人の愛情を弄ぶなんて酷いことするわ」
「ガッ!? くそっ! 誰だ!?」
突如一つの魔力弾がリドウの背中に当り、その衝撃でリドウは思わず黒歌を離す。
その隙に黒歌はなんとか逃げ出して直ぐ近くに居た小猫の元に行く。
俺もそれを見て剣を投げ捨てて、すぐさま黒歌の元に駆けていく。
「……姉様、無事で…良かったです。……それにルドガー先輩も」
「黒歌、無事か? どこか傷つけられたりしていないか?」
「私の事より、ルドガー…っ!」
黒歌が俺の首筋を指さしてくるので何事かと思い触ってみると赤い液体が付着していた。
ああ……皮膚を何枚か切ったんだろうな。でも、大きな血管とかを切ったわけじゃないから多分、放っておいても治るだろ。そんなことよりも黒歌が無事で本当によかった。
そう思って笑いかけると何故か泣きそうな顔で見つめられた。
あれ、そんなに俺の傷の事が心配なのか? こんなの大した傷じゃないんだけどな……。
そう思っても心配をかけているなら声を掛けてあげるべきだと考え口を開く。
「気にするなって、こんな傷すぐ治るから」
「でも…っ!」
「君が無事なら……それでいいんだ」
そう言って黒歌の頭をポンポンと撫でてやる。すると耐え切れなくなったように、また泣き始めたので抱きしめて胸を貸してやる。そして、そのままの状態でリドウの方を見る。正確にはリドウに攻撃した奴の方をだけどな。そこには月光を受けて光り輝く純白の鎧を身に纏い、背中に青白い光を放つ翼を生やした人物が浮いていた。あれはまさか―――
「白龍皇! 赤龍帝に引き寄せ
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