三十話:何よりも大切な―――
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みるとそこには信じられない光景が広がっていた。
「ルドガー君、この女の命がどうなってもいいのか?」
「ごめんなさいにゃ……ルドガー」
「リドオオオオオオオッッ!」
そこにはアーシアを吹き飛ばして自分の傍から離れさせ、少しふらつきながらも骸殻状態のまま
ニヤニヤとした表情を浮かべ、黒歌の首筋にナイフを突きつけるリドウの姿があった。
くそっ! どうして俺はあいつに止めを刺さなかったんだ…っ。あの時しっかりと止めを刺していればこんなことにはならなかったのに! 後悔の念が押し寄せてくるが今はそんなことをしている場合じゃない。とにかく黒歌を何とかして助け出さないと!
「黒歌を離せ、リドウ!」
「さあ、それはルドガー君次第だぜ」
勝ち誇った笑みでそう言って来るあいつの顔を今すぐにでもぶん殴ってやりたいけど黒歌が人質に取られているために下手には動けない。俺はどうしようもない悔しさにギリリと歯ぎしりをしてあいつの要求を呑むことにした。
「……どうすればいんだ、リドウ」
「何、簡単さ。ルドガー君がこの女の希望の―――架け“橋”になればいいのさ」
“橋”という言葉を強調して言うリドウに思わず顔を歪ませてしまう。こいつが言いたいことは分かった、俺に“魂の橋”になれと―――黒歌の為に生贄になれと言っているんだ。
まったく……前世で橋に変えられた恨みか? それならビズリー相手にでも晴らしてくれればいいのにな。
俺はそんなどうでもいい事を考えながら片手の剣に目を移す。黒歌の為に命を捨てる覚悟なんて
とうの昔に出来ている。何も迷う事なんかない、俺は大切な人を守る為に一度命を捨てた。
なら、今もう一度―――大切な人を守る為に命を捨てよう。
俺はあの時、兄さんが俺の為に“橋”になろうとした時のように自分の首筋に刃を当てる。
それを見たみんなの息をのむ音がしっかりと聞こえてくる。コカビエルでさえ驚きの表情を浮かべている。多分、聞かされていなかったんだろうな。それに戦う事に拘りを持っていそうだから戦わずに殺すことは嫌いなのかもしれない。まあ……もうすぐ死ぬ俺には関係ないことか。
「リドウ、黒歌を離せ。俺はいつでも死ぬ覚悟は出来ている!」
「開放するのはルドガー君が死んでからに決まっているだろう?」
「卑怯な手を!」
「勝てれば何したっていいんだよ、グレモリー嬢」
そんな保証がどこにあるって言うんだよ! そう怒鳴りたいのをグッとこらえて黒歌を見る。
部長が何か言ってくれているが俺の耳には届かない。俺はただ、黒歌だけを見つめている。
黒歌が人質に取られている以上は下手な真似は出来ない。
ここで俺が死んでも黒歌が助かるとは限らないけど……俺が死
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