三十話:何よりも大切な―――
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守る努力をしましたじゃダメなんだ。俺が欲しいのは、守ったという結果だけでその過程がどんなに誇れるものでも、美しいものでも、素晴らしいものでも、守れなきゃ何の意味もないんだ。だから……黒歌を失いそうになった自分が酷く情けない。
「ルドガー……」
「もう大丈夫だ、黒歌。取りあえず少しでも治療しないとな」
俺は優しく黒歌に声を掛け校舎から、飛び下りてアーシアの元に歩いていく。
見た感じ致命傷ではないけどこのまま何もしないなんて俺には出来ない。
アーシアの神器ならしっかりと治してくれるはずだからな。
俺がアーシアの所に行くと何やら俺と黒歌に不安げな視線が集中する。何なんだ、一体?
取りあえず考えていてもしょうがないのでアーシアに黒歌の治療を頼む。
「アーシア、黒歌の手当を頼む」
「はい、任せてください!」
俺の頼みに元気に応じてくれたので黒歌をアーシアに預けて他のみんなの方を振り返る。
……相も変わらず不安げな視線だな。本当に何なんだ、俺がなにかしたのか?
俺はただ、黒歌を助けただけなのに何がいけないんだ。
「ルドガー……その人と―――はぐれ悪魔と知り合いなのかしら?」
意を決したように口を開いた部長の言葉に後ろの黒歌がビクリと震えた気配が伝わってくる。
……はぐれ悪魔、確か眷属である悪魔が己の欲望の為に主を殺し、逃げ出した場合に付けられる名前だったか? それが黒歌だって言うのか……。さっきの黒歌の反応からして部長の言っていることは本当なんだろうな。
部長の言いたいことは何となくわかる。
きっと俺が敵じゃないのかを疑っているんだろうな、だからさっきから不安げな目で俺を見ていたんだろう。確かに犯罪者と一緒に居る奴を信用しろって言っても難しいだろうな。
そう思いながら不安げに見つめる部長達に答える。
「知り合いです。でも、はぐれ悪魔だっていうのは今初めて知りました」
再び後ろから黒歌が震える気配が伝わってくる。今度はさっきよりも強くだ。
きっと俺に拒絶されるんじゃないかと心配しているんだろうな。誰だって拒絶されるのは怖い、
あの強かった兄さんでさえ、俺に拒絶されることを恐れて昔の自分の事を話してくれなかった。
結局、兄さんが死んだ後に知ることになったけど俺にはそんなことはどうでもよかったんだ。
兄さんは俺のたった一人の肉親なんだから拒絶するわけがない。
だから黒歌も……そんな心配はいらない。
「そう、それなら――「で、それがどうした?」――ル、ルドガー?」
部長の言葉を遮り少し低い声を出す。それに対して戸惑った表情を見せるみんな。
俺はそんなみんなの様子を無視してハッキリと告げる。
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